フランスのマクロン大統領は、議会に対し、国の安定を優先し、さらなる内閣総辞職を招かないよう求めた。

   マクロン氏はセバスチャン・ルコルニュ氏を首相とする新内閣を12日に発表した。ルコルニュ氏は9月に首相に任命されたが、先週いったん辞任し、今月10日に再任された。

  ルコルニュ氏は予算案を可決させ長引く政治危機を打開するよう求める強い圧力にさらされている。しかし、マクロン氏が野党に広範な譲歩を拒んでいることから、ルコルニュ氏の立場は危うく、早ければ今週に不信任案が提出される見通し。

  同氏は首相として初めて14日に国民議会で施政方針演説を行い、予算案を提示する。政権維持のため大統領の政策についてどの程度譲歩するのかも説明する。

  マクロン氏はイスラエルとイスラム組織ハマスの和平合意署名式のため訪問中のエジプトで、「すべての人の義務は安定に向けて働くことであり、不安定に賭けることではない」と述べ、「全員が落ち着いて、厳格かつ敬意をもって職務にあたるよう求める」と呼びかけた。

French President Emmanuel Macron at Elysee Palace

マクロン仏大統領

Photographer:Nathan Laine/Bloomberg

  ルコルニュ氏は、極右と極左の双方が求める解散総選挙を回避するため、対立する野党勢力との微妙なバランスを保たねばならない。これには、社会党と共和党を説得し、今後の不信任案採決で棄権に回らせる必要がある。

  両党の幹部は週末、マクロン氏が自らの政治的立場の危うさを認めず、対立を招いている政策を撤回しないことに不満を示した。

  バイル前首相やその前任のバルニエ元首相はいずれも、予算を巡る不信任決議で辞任に追い込まれている。

  社会党はマクロン氏の経済政策全般の撤回を要求しており、支給開始年齢を引き上げた年金改革の停止や富裕層への増税などを求めている。中道および中道右派はこうした急進的な措置に反対している。

  再び内閣総辞職となれば、フランス国債市場で売りが強まる可能性がある。フランスとドイツの10年国債利回りの差は80ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)を超える水準に上昇した。8月には65bpを付けていた。昨年マクロン氏が解散総選挙を行う前は43bpだった。

  

  マクロン氏とルコルニュ氏は、新内閣で主要閣僚の多くを再任した。レスキュール経済・財務相やバロ外相が続投する一方、ルコルニュ氏による前回の組閣の試みに主に反発したルタイヨー内相に代わり、ローラン・ヌニェス氏が新内相に就く。

  ルタイヨー氏の所属する共和党は声明で、第2次ルコルニュ内閣に残留する閣僚は、もはや党所属ではないと発表した。

  ルコルニュ氏は、予算が成立しなければ2026年の財政赤字が国内総生産(GDP)比で約6%に達し、今年の5.4%予想から悪化すると警告している。マクロン氏は13日、年内に予算を成立させられると確信しているとエジプトで記者団に語った。

原題:Macron Calls for Stability With Another Government on the Brink(抜粋)

— 取材協力 Alice Gledhill, Julien Ponthus and Samy Adghirni

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