オーストラリアのシドニー大学(University of Sydney)は9月12日、シーメンス・ヘルシニアーズ(Siemens Healthineers)社と提携し、州内で最も高度な磁気共鳴画像(MRI)スキャナーを備えた臨床研究施設を開設したと発表した。
(出典:シドニー大学)
新たに開設された「Cima.X 3T MRI臨床研究施設」は、両者の戦略的パートナーシップにより整備された。これによりニューサウスウェールズ州ではこれまで利用できなかった高性能な画像機能が導入され、先端医療研究と臨床応用が強化される。
シドニー大学のデイビッド・ソディ(David Thodey)学長は「世界で最も強力な臨床承認済み全身MRIスキャナーであり、研究者や臨床医は患者に利益をもたらし、医療制度を強化し、豪州の国際的研究での地位を高める発見につながる」と述べた。
施設はチャールズ・パーキンス・センター内の研究専用手術室「ハイブリッドシアター」に隣接し、MRIと外科手術を同じ空間で実施できる。この構成はリスクを減らし、MRI誘導生検や脳刺激法、心臓弁手術を含む新たな外科手法の開発を可能にする。
心理学部のシャロン・ネイスミス(Sharon Naismith)教授は、認知症研究に本施設を活用する予定だ。新しい3T MRIスキャナーは高精細かつ高速の画像化を実現し、脳の微細構造解析や疾患マーカーの早期検出に役立つ。
同施設は、認知症や多発性硬化症の脳経路解析、精神疾患治療の検証、心疾患やスポーツ障害の診断改善、腫瘍の早期発見や治療反応の追跡など幅広い研究を支える。
暫定副学長(研究担当)のジュリー・ケアニー(Julie Cairney)教授は「この連携は研究者、臨床医、産業界を結びつけることで発見を成果に変える道筋をつくるものです」と述べた。シーメンス・ヘルシニアーズのアリソン・カレン(Alison Curren)氏も「この協力により、神経科学や腫瘍学、心臓病学でのブレークスルーが加速します」と語った。
研究インフラ担当副学長のサイモン・リンガー(Simon Ringer)教授は「MRI施設は大学の研究戦略の中心であり、多様なプロジェクトを支え、臨床応用研究を前進させるものです」と位置付けた。
サイエンスポータルアジアパシフィック編集部
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