10月10日(金)に放送した「ガイアの夜明け」(毎週金曜夜10時)のテーマは、「移住で夢を叶える!」。
都会から住みやすい地方への“移住ブーム”が続いている。中でも、全国の「移住希望地ランキング」で上位を占めるのが北関東。そのランキングで、全国1位となったのが群馬県。
東京から新幹線で1時間ほどの“転職なき移住生活”と手厚いサポート体制が人気の理由だ。
食費や教育費など物価の安さに加え、自然との距離が近いのも特徴。
今回注目したのが、「全国住み続けたい街ランキング」で3位になったこともある群馬・桐生市。広く移住者を募るのではなく、「店舗開業や起業」を目指す移住希望者をメインターゲットに、一風変わった地域再生を目指している。念願だった店を構え「第二の人生」を歩み始めた移住者たちを追った。
【動画】移住人気No.1の群馬県 最大140万円助成…東京から1時間40分で実現する“憧れの開業”
群馬・桐生市が仕掛ける「開業」と「コミュニティー」による移住戦略

9月21日。「東京駅国際フォーラム」で開かれていたのは、全国から700ほどの自治体が集まった移住相談会。近年のブームもあり、2日間で約3万人が訪れた。
人口減少に悩む地方にとって、それを少しでも食い止める手段が移住者の獲得だ。

人気移住先の一つ静岡市は、補助金最大1000万円を大きくアピール。「遊びが暮らし。」というキャッチーなライフスタイルを掲げるのは、長野・信濃町。

会場には、群馬県の山本一太知事が敵情視察に来ていた。実は群馬、2024年「移住希望地ランキング(窓口相談)」(出典:ふるさと回帰支援センター)で1位に輝き、4年連続王者だった静岡、近隣の栃木、長野を抑えての悲願達成。
2024年度の群馬県への移住者は1560人と過去最高を記録し、ブースには多くの人が押し寄せていた。
実は群馬県、東京と近いにも関わらず、食費や教育費などは全国トップの安さで、これも大きな売りとなっている。

その群馬県の中でも、一風変わった戦略を取るのが、群馬県の東部に位置する桐生市。
人口約10万人で、東京から特急列車で約1時間40分。単なる移住者の獲得競争とは一線を画し、店舗開業や企業支援を打ち出している。2022年には、「全国住み続けたい街ランキング」(出典:生活ガイド.com)で3位に。
この日、桐生市役所の馬場秀穂さんを訪ねてやって来たのは、移住希望者たち。市が主催する町の見学ツアーが行われ、多い時は20人以上が参加する。

ツアー参加者が案内されたのは、街の中心部、本町通りにあるデニム工房「森山縫製」。先輩移住者が営むお店だ。店主の森山竜乃介さんは、岡山でデニム縫製の修業後、2024年に工房をオープン。職業柄、わざわざ桐生を選んだのには理由があった。
「古いミシンを使っているので、同じようなミシンを使っている刺しゅう店によく相談する。職人さんとの距離は大事。それが桐生のいいところ」(森山さん)。
繊維工場の名残を残す桐生の町。かつては「西の西陣、東の桐生」とうたわれ、古くから続く織物の産地でもある。今も地場産業として根付き、多くの職人が繊維の仕事に携わっている。
そうした町の歴史や環境に魅かれて移り住む人もいて、比較的、新しいアパレルの店が多いのも桐生の特徴だ。

続いて、ツアー参加者が訪れたのは、桐生で唯一のベーグル専門店「komugi」。
この店を営んでいるのが、2023年にさいたま市から移住した戸草内さん一家で、親子3人で引っ越してきた。
脱サラして職人になった戸草内さんが1日に作るベーグルは200個ほど。休日は、昼過ぎに完売してしまう人気ぶりだ。
「子供たちの手が離れたら田舎暮らしを…と考えていたが、”遠くない?”と。今やりたいのであれば、今叶えた方が幸せだと思った」(戸草内さん)。
以前は雑貨店が入っていた空き店舗を改装し、自己資金300万円(厨房機器は埼玉時代のものを使用)で店を始めた戸草内さん。
昭和40年頃の本町通りは、専門店が軒を連ねる一大商店街だったが、今は桐生の中心市街地の16パーセントが空き店舗(2024年度)に。
市は空き物件を活用した店舗開業を後押しするため、さまざまな補助金を準備。最大で140万円を助成するなど、取り組みを強化してきた。
さらに桐生には、移住者を支援する独自の取り組みも。
この日、不動産会社「アンカー」副社長の川口雅子さん(56)は、東京から移住し、お好み焼き店を開きたいと夢見る男性の相談に乗っていた。川口さんは、桐生市が委嘱する移住コーディネーターの一人で、市が開設した移住者獲得のための相談窓口「むすびすむ桐生」の最前線で活動している。

川口さんは10年ほど前、築60年の古民家を改装したカフェ「プラスアンカー」をオープンし、不動産業と2足のわらじを履いている。
カフェで週末の夜に開かれていたのは、川口さんが月に一度主催する、移住者と地元住民の交流会。ベーグル専門店の戸草内さん夫婦も参加していた。
川口さんはこうした機会を作ることで、地元住民と移住者の間を取り持ち、新たなビジネスへと結び付ける手助けをしている。
新たにキャンプ場を開く予定の男性の横には、ベーグル店の戸草内さんが。川口さんがつないだ2人の間で、話はトントン拍子に進んでいく。
「桐生にわざわざ移住してきてくれた。みんなで集まって、いろいろなことを話してもらいたい」(川口さん)。
そんな川口さんが今仕掛けようとしているのが、依頼を受けた築89年の古い二軒長屋。かつては織物工場で働く女性たちの住まいだった。
「古い家を改装してお店にしたら、桐生っぽい。古い家を街に生かすのもいい」(川口さん)。

3月中旬。あの長屋に、東京や千葉からの移住希望者や地元の人たちなど、約30人が集結した。始まったのは本格的な解体作業で、参加者がどんどん壁を壊していく。
これは、古民家を改修して店舗を開きたいと考えている人に向けたイベントで、川口さんが発案した。
3年前、埼玉から移住した大谷美紀さんも、川口さんの勧めでイベントに参加。そしてその4カ月後、大谷さんは自ら壊したあの物件を気に入り、賃貸契約を結ぶことに。
自己資金は約200万円で、家賃は1カ月約10万円。川口さんが大家さんと交渉してくれた。
その後、大谷さんの店の改装は進んでいくが、あの古い長屋から、どんな店が出来上がるのか――。
渋谷から来たIT社長 地域課題解消への挑戦

JR桐生駅のほど近くに、薪サウナ「ニノサ」がある。移住者の今氏一路さん(41)は、1年前にこの店を開業。桐生の山林で自ら切り出した薪をここへ運んでいる。

桐生の薪を売りにした本格的なサウナは、深い水風呂もあり、今や若者たちを中心に駅前の人気スポットになっていた。

今氏さんの本業は、IT系の会社「シカク」の経営。商店街の一角にある廃業した子供服の店舗を改装し、4年前にオフィスを開設した。
埼玉で育った今氏さんは、高校卒業後アメリカに留学してデザインを学ぶ。帰国後はIT大手「サイバーエージェント」を経て、8年前に独立。渋谷にオフィスを構え、企業のシステム開発を手がけていた。少数精鋭で年商は5000万円ほど。
「順調に来ていたが、コロナ禍になり、渋谷をメインにすることではない流れになるとの読みがあった」(今氏さん)。
会社のスタッフの1人が桐生出身という縁から、初めてこの地を訪れた。

桐生で今氏さんが取り組んでいるのが、地元のタクシー会社と組んだ地域課題の解消だ。
午後2時、営業所の配車センターをのぞいてみると、なんと客の依頼を次々と断っていた。
コロナでタクシーの需要が激減したためドライバーの離職が進み、深刻なタクシー不足の原因に。

その問題を解消するために、今氏さんが開発に取り組んでいるのが、「日本版ライドシェアに特化したシステム」。日本版ライドシェアとは、規制緩和により2024年4月から始まったシステムで、一般ドライバーがタクシーと同じように有料で客を運ぶ。二種免許は不要だ。
今氏さんは、桐生周辺で便利に使える配車アプリを独自に開発。2024年11月、実用化にこぎつけた。地元も大いに期待を寄せる中、群馬県では桐生市が初めての導入となった。
「そこまで『地方のために』というのはなかったが、実際に住んでみると、日本の豊かなものを守っているのは地域だと思った。そういう所に僕らが来て、開発したシステムでみんなを助けられたら」(今氏さん)。

配車の電話が多い午後6時、ライドシェアのドライバーが初めて出勤した。初日は今氏さんも車に乗り込み、様子を確認させてもらう。
ライドシェアのドライバーに応募してきたのは、普段は運送関係の仕事をしているという男性で、二種免許は持っていない。早速、配車依頼が入るが…。
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