ニューヨーク(CNN) 米国のバージニア蒸留所のギャレス・ムーア最高経営責任者(CEO)は、2025年が始まった当初、カナダで自社のアメリカンシングルモルトウイスキーを販売することに強気の姿勢だった。

しかし、関税をめぐる冷え込みや、カナダを51番目の州にするというトランプ氏の脅しにより、何世紀も続いた米国とカナダの友好関係は崩壊し、需要は急落した。

ムーア氏はCNNの電話取材に応じ、「事業規模を3倍に拡大することを目指していたが、ゼロにまで落ち込んでしまった」と語った。「産地のせいでウイスキーの味が突然悪くなったかのようだった」

カナダ当局は、米国産蒸留酒の店頭販売禁止に踏み切り、今でも禁止措置は多くの州で続いている。

ただし、バージニア蒸留所は、米国とカナダの不安定な関係に巻き込まれた唯一の米国企業というわけではない。

姿を消したカナダ人観光客

米ブラフポイント・ゴルフリゾートのオーナー、ポール・デイム氏/CNN
米ブラフポイント・ゴルフリゾートのオーナー、ポール・デイム氏/CNN

多くのカナダ人が米国への訪問を取りやめていることから、カナダ人観光客の安定した来訪に頼ってきた無数のリゾートや旅行会社が打撃を受けている。

ニューヨーク州プラッツバーグにあるブラフポイント・ゴルフリゾートでは例年、日々プレーをするゴルファーの約70%がカナダ人だった。しかし今年は違う。

同リゾートのオーナー、ポール・デイム氏は「劇的に減少してしまった。カナダからゴルフをしに来る人は極めてまれだ」と漏らす。

カナダ統計局の最新データによると、今年9月末までに陸路で米国を訪れたカナダ人旅行者数は31%減少。空路での渡航は13%減少している。

ブラフポイント・ゴルフリゾートは対処策として、営業時間を短縮し、清掃スタッフを削減した。

「つらいのは、私たちは何もしていないということだ。事業を拡大し、国境を越えて来たいと思っている人々を引き付けるために懸命に取り組んできたのに」とデイム氏は訴えた。「カナダ人はただ不満を持っている。経済政策ではなく、自国を傷つけた言葉が問題なのだ」

米国への訪問をためらう人々

旅行業界の幹部らは、カナダ人観光客の減少要因として、トランプ政権の強硬な国境警備への懸念も挙げる。

ワシントン州シアトルを拠点とするフェリーサービス会社クリッパー・ナビゲーションのマーク・コリンズCEOは「人々は越境することにリスクを感じ始めている」と述べた。

米国旅行協会のジェフ・フリーマン会長兼CEOは、カナダなどからの外国人観光客の中には、税関で拘束されたり、持ち込もうとしている機器の検査を受けたりすることを恐れている人もいると語った。

「旅行者は以前ほど歓迎されていないと認識している」とフリーマン氏は述べた。「政権がなしうることで最も重要なことは、世界中の旅行者に対し、米国はビジネスや合法的な旅行者に門戸を開いているというメッセージを送ることだ」

フリーマン氏は、テキサス州、フロリダ州、アリゾナ州の人気観光地にとって、頼りにしているカナダ人観光客がやってくるかどうかが判明するこの冬は「大きな試練」になるとの見方を示す。

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