オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は9月10日、同機構のウサギの生物防除研究者が、効果的なウイルス生産を阻んでいた細胞培養のブレーキを解除し、高レベルのウイルス複製や連続継代、高度な試験を健全かつ堅牢に行えることを実証したと発表した。この研究成果は学術誌Journal of Virologyに掲載された。

ウサギはオーストラリアで最も広く分布し、在来の動植物種の生存を脅かす最も破壊的な有害動物の1つである
© Liz Poon CSIRO

ウサギはオーストラリアで最も破壊的な害獣の1つである。ウサギによる農業被害は年間約2億ドルと推定され、生物的防除が導入される前は年間20億ドルに迫っていた。ウサギは国内で絶滅の危機に瀕する322種に悪影響を及ぼし、野良猫とキツネによる脅威の合計を上回る。

今回の画期的な技術は、ウサギを対象とした次期ウイルス株の開発に向けた取り組みにおいて、ゲームチェンジャーとなる。CSIROのウサギ生物防除研究グループとキャンベラ大学(University of Canberra)で研究を行うウイルス学者のマイケル・フレーゼ(Michael Frese)博士は、改良された新たなオルガノイドが、進行中のウサギ生物防除研究においていかに重要であるかを次のように説明する。

顕微鏡下のウサギ肝臓オルガノイド細胞
(出典:いずれもCSIRO)

「新しく改良された細胞培養システムにより、時間と資源を節約できます。ウイルスの検査では、感染性ウイルス粒子の濃度を測定する必要があり、これには多くのウサギの感染が必要でした。この細胞培養システムでは、培養プレート上で実施するため、実験用ウサギへの感染の必要性が大幅に削減されます。このシステムにより、研究者は新しいウイルス株を迅速かつ効率的に提供できるようになります」

このオルガノイド培養システムの開発は、オーストラリアのウサギ生物防除パイプライン戦略を推進する一環である。この戦略は、ウサギ対策の最善の態勢を整えるための短期・中期・長期の行動計画を定め、オーストラリアの生物防除パイプラインをより詳細に管理できるようにする。CSIROは、ウサギの生物防除研究が正しい方向に進むことを担保するため、政府や産業界と積極的な提携を行っている。

サイエンスポータルアジアパシフィック編集部

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