「サッカー王国」ブラジル代表(FIFAランキング6位)のカルロ・アンチェロッティ監督(66)が13日、東京スタジアム(味の素スタジアム)で翌日の日本代表(同19位)戦に向けて会見した。

世界的なイタリア人名将の言葉を聞こうと、日本だけでなく多くのブラジルメディアも集結。スタジアム内の会見ルームは満員御礼状態だった。

指導者としてACミランで2度、Rマドリードで3度の合計5度に及ぶ欧州チャンピオンズリーグ優勝。昨季リーグ戦終了後の5月にブラジル代表監督に就任。ワールドカップ(W杯)南米予選4試合(2勝1分け1敗)と今月10日の韓国戦の計5試合に指揮を執っている。

その韓国戦はエステバンとロドリゴが各2点、ビニシウスも追加点と注目のアタッカーたちがゴールを重ねて5-0の圧勝。あらためてブラジル強しの印象を世界に与えた。

現地メディアからは「美しいサッカーがブラジルに戻ったと沸いている。ブラジルを率いるということは、そんじょそこらのチームを率いるのではない。楽しいサッカーを意識しているのか?」と問われると、イタリア人のリアリストはこう回答した。

「もちろん、ブラジル選手の個々のクオリティーは美しいサッカーになる。ただ、美しいサッカーというのはそれだけではありません。集団的な動きや決めごとだったり、オフザボールでも美しいサッカーができる。そういうことを理解をする必要がある」

見栄えのいいボール技術に目はとらわれがちだが、サッカーには組織美、機能美という組織としての美しさもある。組織の中に個性が生きているのだという考え方を披露した。

また、ブラジルは伝統的にレギュラーの11人を固定化していく傾向が強い。監督の仕事は11人を選び出すこと、とも言われる。大勝した韓国戦で11人が見えたのでは? と問われた。すると、いなすようにこう話した。

「選手というのは代表に合流したらモチベーション高くプレーしなければならない。その中でチーム内の競争はとても重要になる。だから最初から11人を固定するのでなく、W杯に向けて少しずつチームを試していって、ローテーションをしていって、特定の選手がどのようにシステムにはまっていくか見ていく。これが現状では一番のソリューションでないかと考えています。私が信じているのは、このチームというのは1つのプレーの仕方だけではダメだ。複数のプレーの仕方、プレースタイルもそうですし、違うシステムでもプレーできないといけない。ブラジル選手のクオリティーはそれを可能にする」

つまり翌日の日本代表戦でもビニシウスやロドリゴ、カゼミロ、ギマランイス、ミリトン、ガブリエウといったコアメンバーを残しつつ、選手を少し入れ替えてテスト(観察)していく考えを口にした。

「今後も観察していく必要がある。直近のFIFAデーで最適なストラテジー(戦略)を取っていくことに尽きる。だから11月のFIFAデーにまたいろいろと実験をして、明日の試合(日本代表戦)も色々な選手を試す実験の場です。最終的に3月の最終的なFIFAデーを終えて、最終的なリストを固めたい」

アンチェロッティ監督が就任して、攻撃色ばかり強いチームだったところに守りの意識もしっかり根付いている。どうチームを変えたのか、その手腕について問われるとこう回答した。

「チームにバランスを求めました。1つのベースを作ってそこにコミットメント(責任を持って取り組むこと)させ、そして攻撃する姿勢を徹底した。そのためにはチームに犠牲になる、犠牲の精神も導入しました。それが効果が出まして、前の韓国戦に関して、ボールをキープができてよいゲームができました。システムは4-4-2ですけど、ゲーム内容によってはシステムを変えていくことはできます」

中盤にはアタッカーを2人組み込むため、見え方は4-2-4という布陣にもなってくる。高い機動力が流動美をもたらし、即興的な連係やドリブルからの崩しはブラジルらしさにあふれている。

また、注目されるネイマールについても「コンディションさえよければ全く問題なく今の代表チームに当てはまる」と明言した。

目指すは2002年日韓大会以来となるW杯優勝だ。ただ、これまで優勝した国はすべて自国の監督だった。イタリア人名将がブラジル代表を頂点に導けば、史上初の出来事になってくる。この点について問われると、自信ありげにこう口にした。

「もちろん私が目指すものはブラジルを最善の形で準備して、最高のパフォーマンスで次のW杯を優勝することです。おっしゃる通り、誰も自国以外の監督が優勝されたことはないですけど、物事にはすべて初めてというものがあります」

アンチェロッティ監督は日本は実験の良い場所だ。現役時代にACミランのMFで89年のトヨタ杯を制し、ACミランの監督としても07年にクラブW杯で世界一に輝いた。加えてブラジル代表にとっても02年、横浜の夜空に向けてW杯のトロフィーを掲げた。

そして8カ月後になったW杯に向け、再び日本から世界の頂点へと向かう。

「ありがとう」

会見を終えるとメディアに向け、感謝の言葉を発した。名将がまとう自信と風格のオーラ。今回のアジア遠征を、今後への大きなステップにしたい考えがにじんだ。【佐藤隆志】

【日本代表】ビニシウス!ロドリゴ!ガチメンバーのブラジル代表と対戦/ライブ速報します

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