公開日時 2025年10月13日 05:00更新日時 2025年10月13日 14:01
沖縄県庁(資料写真)
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宮沢 之祐
県病院事業局の宮城和一郎病院事業統括官が、県立病院について「収益を減らしても人件費を減らさざるを得ない」とし、事実上の事業縮小の方針を病院職員に示していることが12日までに分かった。「地域の他病院と重なる診療を見直すこと」「手放さざるを得ない施設基準を見定めること」など8項目の対応を求めている。
病院事業局は県立6病院と、16の離島診療所を運営している。宮城統括官は9月25日、原則として退職者の補充をしない方針をオンラインで6病院の職員に説明。同内容のメールも送り、全職員への共有を図った。しかし、強い反発があるとして10日の県議会文教厚生委員会で質疑があった。
宮城統括官は職員への説明で、もともとの赤字構造がコロナ禍による入院患者の急減で深刻化したと指摘。「人を増やすほど、或(ある)いは現状維持でさえ、赤字が拡大している」とした。
8項目の改善策には、県からの繰入金の対象にならない診療について「存続の必要性を検討すること」との項目もある。「収益が1億円減ったとしても、同時に人件費が1億1千万円減るのであれば赤字は改善に向かう」とし、事業縮小の姿勢を鮮明にしている。
これまで県立病院は沖縄の離島医療を担う中核だった。中でも中部病院は総合診療医の育成に定評があり、全国から集まる研修医を診療所に派遣してきた。しかし病院の機能縮小は「研修医に選ばれない病院」につながりかねない。また、沖縄は今後、急速な高齢化で高齢者救急の増加が確実視される。その増加分を民間にゆだねるのか、県立病院の縮小戦略の是非が問われそうだ。
(宮沢之祐)
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