4人が石造りの建物の入口に横並びに立っている。トランプ氏は右手の拳を軽く上げている

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画像説明, 英首相別荘「チェッカーズ」の外に立つ、トランプ米大統領夫妻(左)とスターマー英首相夫妻

2025年9月19日

アメリカのドナルド・トランプ大統領は18日、国賓として訪れているイギリスでキア・スターマー首相と会談し、同国が不法移民の阻止で軍を利用することを提案した。

トランプ氏はこの日、首相の公式別荘「チェッカーズ」でスターマー氏と協議した。

終了後の共同記者会見でトランプ氏は、「(不法移民は)国を内部から破壊する。私たちは実際、アメリカに入って来た多くの人を排除している」と述べた。

トランプ氏はまた、アメリカでの自らの国境政策について語り、イギリスも小型船で英仏海峡を渡る移民という同様の課題に直面しているとした。

そして、「人々が入り込んでいて、私なら止めると(スターマー)首相に伝えた。軍隊を呼び出そうが、どんな手段を使おうが、関係ない」と述べた。

トランプ氏はその後、米FOXニュースのインタビューで、移民問題がスターマー氏を「ひどく」苦しめているとし、この問題で「強い姿勢」を取るよう同氏に勧めたと話した。

トランプ氏は今年1月にホワイトハウスに復帰してから、不法移民の国外退去に力を入れ、不法な国境通過の取り締まりも強化している。

不法移民への対策では、両首脳は意見の隔たりを見せず、一体感や互いへの好感を示した。

記者会見でトランプ氏と並んで立ったスターマー氏は、イギリス政府は不法移民問題に「ものすごく真剣に」取り組んでいると述べた。

トランプ氏は今回の実質2日間の訪英で、初日の17日にはウィンザー城でチャールズ国王と王室メンバーらのもてなしを受け、国賓として晩さん会に出席。翌18日、スターマー氏と政治談議を行った。

共同記者会見が終わると、トランプ氏と妻メラニア・トランプ氏は、大統領専用機でスタンステッド空港から帰途についた。

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パレスチナやウクライナについては

共同記者会見では、英米の記者らから、パレスチナ国家の承認、言論の自由、ウクライナでの戦争、エネルギー問題などの質問も出た。

両首脳は、英米の「特別な関係」をアピールし、テクノロジー分野での新たな合意について発表。トランプ氏は、両国が人工知能(AI)の世界で「優位に立つ」のを促進するものだとした。

チェッカーズで署名されたこの合意は、米企業がイギリスに投資し、AIや量子、その他の先進技術に関する協力を強化する内容となっている。

トランプ氏は、マンデルソン氏に同情しているかと問われると、「実は彼のことは知らない」と返答。気まずい雰囲気になりかけるなか、スターマー氏に発言を譲った。同氏はマンデルソン氏を、性犯罪で有罪が確定した米資産家ジェフリー・エプスティーン元被告(故人)との関係をめぐって解任した。

パレスチナ国家の承認について質問が出ると、トランプ氏は「首相とは意見の相違がある」と述べた。パレスチナは、国連加盟193カ国のうち147カ国から承認されているが、国際的に合意された境界線や首都、軍隊などをもっていない。

トランプ氏はこうした動きに反対の立場で、パレスチナのイスラム武装組織ハマスについて、ガザ地区で「人質をおとりにしている」と非難している。

この日の記者会見での質問は、ウクライナでの戦争にも及んだ。トランプ氏は、和平努力に関わろうとしないとして、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領への失望を表明。「彼には本当にがっかりした」と述べた。

トランプ氏はまた、プーチン氏を交渉のテーブルに着かせるためとして、西側同盟諸国にロシア産の石油の購入を止めるよう求めた。ただ、ロシア側への制裁は約束しなかった。

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イギリスの影響力拡大は「まったくない」

トランプ氏はFOXニュースのインタビューで、イギリスに対する関税の引き下げの可能性について問われると、スターマー氏のことは「好きだ」が、アメリカは現在の協定で「大儲けしている」と述べた。

また、イギリスに「北海を開放」して石油・ガスの掘削を進めるよう要求。「(イギリスは)価格の面で大きなエネルギー問題を抱えている」と述べた。

BBCのサラ・スミス北米編集長は、チェッカーズで首脳会談を取材した際、米ホワイトハウスのスージー・ワイルズ首席補佐官に、今回のトランプ氏の訪英によって、アメリカの貿易や外交政策に対するイギリスの影響力が高まるのかと聞いた。ワイルズ氏の答えは、「まったくない」だった。

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