11月29日、 米IT大手、メタが同社の交流サイト(SNS)「フェイスブック」や「インスタグラム」を利用する子どもの精神衛生上のリスクがあることを知っていたことを示す内部メールを元社員のフランシス・ホーゲン氏が2021年に告発して以来、世界の指導者らはソーシャルメディアが若者の心を虜にするのをどう抑えるかを巡って苦悩してきた。写真は28日、メルボルンで自分のスマホを見る高校生(2024年 ロイター/Asanka Brendon Ratnayake)
[シドニー 29日 ロイター] – 米IT大手、メタ(META.O), opens new tabが同社の交流サイト(SNS)「フェイスブック」や「インスタグラム」を利用する子どもの精神衛生上のリスクがあることを知っていたことを示す内部メールを元社員のフランシス・ホーゲン氏が2021年に告発して以来、世界の指導者らはソーシャルメディアが若者の心を虜にするのをどう抑えるかを巡って苦悩してきた。
23年には米国の公衆衛生政策を指揮するマーシー医務総監が10代は精神衛生上の危機にあるのはSNSが原因だとして警告するように勧告したが、言論の自由や個人のプライバシー、年齢チェック技術の限界を理由にした反対意見を受けて、西側の政治家は思い切った子どもの利用禁止を打ち出すことはできなかった。
事態が動くきっかけを作ったのは、オーストラリアで2番目に小さい南オーストラリア州のマリナウスカス首相の妻だった。米国の社会心理学者ジョナサン・ハイト氏が執筆したSNS批判の24年のベストセラー書籍「不安な世代」を読んだ後、夫に対して「あなたはこの本を読み、何かしないといけない」と行動を起こすように働きかけたのだ。
オーストラリア議会が今年11月28日に16歳未満の子どものSNS利用を禁止する法案を可決したのを受け、マリナウスカス氏は翌29日にアデレードで記者団に「これほど急速に広まるとは予想していなかった」と語った。
オーストラリアの人口約2700万人のうち7%に過ぎない南オーストラリア州の首相のマリナウスカス氏が子どものSNSアクセスを制限することを個人的に模索後、世界初となる全国的な禁止措置に至るまで6カ月しかかからなかった。
異例の速度は、この問題に対するオーストラリアの有権者の関心の高さを物語る。オーストラリアは25年5月までに総選挙を控えている。
オーストラリア政府の「ユーガブ」の調査によると、国民の77%が16歳未満のSNS利用禁止を支持し、反対は23%にとどまった。
フリンダース大(南オーストラリア州)のロドリゴ・プレイノ教授(政治・公共政策)は「全てはここで始まった」とし、「首相を含む連邦政府はそれが解決すべき問題であり、国全体で取り組むことが最善の対応策になるとすぐに理解した。子供たちに選別することなくソーシャルメディアを使わせることは、世界的な問題になっている」と言及した。
<急速な動き>
メタは今年、世界中の報道機関に対する著作権使用料の支払いを停止すると発表し、これはオーストラリアのオンラインに関する著作権法に抵触する可能性があった。
メタの決定を受け、オーストラリア政府は年齢制限の是非からメタによる著作権使用料停止の影響に至るまで、SNSの社会的影響に関する幅広い調査を開始した。
一方、今年4月にシドニーで起きた2件の刃物による襲撃事件に関連した虚偽のコンテンツの拡散を巡る短文投稿サイトXとオーストラリアのサイバー規制当局との法廷闘争を背景に、野党議員らはSNS利用の年齢制限を求め始めた。
オーストラリア最大の新聞社となっているルパート・マードック氏が率いるニューズ・コーポレーションは、16歳未満の子どものソーシャルメディア利用禁止を目指した編集キャンペーンを始めた。
南オーストラリア州のマリナウスカス首相が州内で14歳未満のSNS利用を禁止すると9月に発表した翌日、オーストラリアのアルバニージー首相がメディアに登場して連邦政府としても年内に禁止策を制定すると述べた。
アルバニージー政権が11月に議会へ提出した法案はSNS運営企業に16歳未満の子どもが利用できないように措置を講じるように義務づけ、違反した場合には最大で4950万豪ドルの罰金を課すとした。
法案は政権与党、および野党の大部分の支持を得て可決された。1年後に施行される。
中国系動画投稿サイトTikTok(ティックトック)の広報担当者は11月29日、このプロセスは急ぎ過ぎであり、若者を「インターネットのより暗い隅」に追いやる危険性があると反発した。
マリナウスカス氏から委託を受け、州単位での年齢制限が可能かどうかの報告書を作成した元高裁判事のロバート・フレンチ氏は電話取材に「オーストラリアでここまで進んだことをうれしく思う」と語った。
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