ドイツ自動車業界の地盤沈下が鮮明になっている。需要低迷や貿易摩擦に中国勢との競争激化が重なり、長年にわたり輸出型の独経済をけん引してきた主要産業が脅かされている。

  9日には高級スポーツカーメーカー、ポルシェが7-9月(第3四半期)の中国販売が前年同期比21%減少したと発表。これに先立ち、BMWやメルセデス・ベンツも中国販売の不振を明らかにしていた。

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  中国では比亜迪(BYD)や小米などの地元勢が価格競争力のある電気自動車(EV)でシェアを拡大している。

  中国での苦戦に加え、米国の関税や欧州市場の販売低迷も重しで、独自動車メーカーは主要3市場すべてで苦戦を強いられている。各社は多額の資金を電池技術に投じてきたものの、第1弾のEVモデルの売れ行きは低調で、次世代車の投入は来年までずれ込む見通しだ。

  ドイツ自動車工業会(VDA)によると、独自動車業界では過去2年間で約5万5000人の雇用が失われた。現在70万人以上が従事する主力産業だが、2030年までにはさらに数万人規模の雇用が消えるとみられている。

  足元の動きから、かつて世界を席巻したスマートフォンメーカー、ノキアの急速な衰退を想起させる「ノキア・モーメント」への懸念も広がっている。企業側は製造労働コストの高さを問題視している。欧州連合(EU)統計局のデータによれば、ドイツ製造業の労働コストはチェコの倍以上だ。EYの分析では、2025年上半期におけるドイツ自動車メーカーの合計利益は前年同期比で3分の1以上落ち込んだ。

  ドイツの欧州経済研究センター(ZEW)のバンバッハ所長は「状況は深刻だ。鉱工業生産は減少し、解雇が増えている」と述べ、企業には安価なエネルギーと低税率、煩雑な行政手続きの簡素化が必要だと指摘した。

  影響はドイツ以外にも波及する恐れがある。同国の自動車産業は欧州の自動車生産の約4分の1を担い、スペインからスロバキアに至る広大なサプライチェーンの中核を成す。屋台骨のドイツが減速すれば、欧州全体の製造基盤を揺るがし、輸出の弱体化を招く恐れがある。さらには、次世代技術を巡る国際競争で欧州が後れを取っているとの懸念を一段と強めかねない。

Porsche Showrooms in Shanghai

上海のポルシェ販売店

Photographer: Qilai Shen/Bloomberg

 

原題:Porsche’s Sinking Sales Deepen German Automotive Malaise(抜粋)

— 取材協力 Wilfried Eckl-Dorna, Craig Trudell and Iain Rogers

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