ⓒ 中央日報/中央日報日本語版2025.10.09 07:12
ドナルド・トランプ米政府による高率関税措置が、世界の通商秩序を揺るがすトリガーとして作用している。米国に続いて欧州連合(EU)も自国産業の保護を名目に関税の壁を強化し始めたことで、保護貿易主義が一時的な現象を越えて「世界的トレンド」として定着するのではないかという懸念が高まっている。
7日(現地時間)、EU欧州委員会は既存の鉄鋼セーフガード(緊急輸入制限)に代わる関税割当制度(TRQ)を発表し、その理由として「域内産業の保護」を掲げた。トランプ大統領が6月に鉄鋼・アルミニウム関税を50%に引き上げたことを受け、アジアや中東産の鉄鋼が米国の代わりに欧州に流入する可能性が高まったため、EUは先手を打つ形で防壁を高めたのだ。EUの鉄鋼産業稼働率は現在67%水準にとどまっている。
韓国貿易協会国際貿易通商研究院のチャン・サンシク院長は「今回のEUの措置は、鉄鋼産業の稼働率低下と輸入急増に対応するための産業保護手段であり、今後の米国との鉄鋼協議で交渉力を高めるための事前布石とも解釈できる」と述べた。
「トランプ・トリガー」により、世界の通商秩序の方向が「自由貿易」から「戦略的保護貿易」へと移りつつあるという評価も出ている。西江大学国際大学院の許允(ホ・ユン)教授は、「相手が壁を築けば同じように壁を築くことで被害を最小化できるという現実主義が、国際貿易の新たな秩序となった」と指摘した。
米国と対照的な立場に立つと思われていたEUが、むしろ米国と同じように関税の壁を高める選択をした点で、その波紋は大きい。許氏は「EUは米国の保護貿易を批判するが、実際の政策は常に類似の軌跡をたどってきた」とし「現在EUは鉄鋼関税だけでなく、デジタルサービス法(DMA)や炭素国境調整メカニズム(CBAM)などによって巨大な規制の城壁を築いている」と説明した。
こうした流れは鉄鋼・アルミニウム産業を越え、戦略産業全体へと拡大する兆しもある。米国が「核心サプライチェーンの再編」を名目に、半導体・電気自動車・バッテリーなどにまで関税拡大を検討しているためだ。EUもまた、自国産業を守るために類似の制度を導入する可能性が高い。
極右勢力の台頭や反移民感情の拡大など、変化する世界の政治環境も保護貿易主義を刺激している。こうした流れは世界経済全体にも悪影響を及ぼす。世界貿易機関(WTO)はこの日発表した報告書で、「関税引き上げ措置が来年の世界貿易成長率鈍化(0.5%)の主な要因だ」とし「保護貿易の拡散がグローバル景気回復の勢いを弱める可能性がある」と警告した。来年の世界貿易は、関税ショックの本格化により鈍化が避けられないという見通しだ。
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