ウクライナ・キーウのレンガ造りの建物が、ロシアの攻撃で破壊され、窓ガラスが割れ、白い煙が上がっている。消防隊ががれきの中で対応している

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画像説明, ロシアの攻撃で破壊されたウクライナ・キーウの建物に集まる消防隊

2025年8月29日

ウクライナの首都キーウで28日、7月以降で最も激しいロシアの空爆があり、子供4人を含む少なくとも23人が死亡したと、ウクライナ当局が発表した。市内にある欧州連合(EU)代表部の建物も損傷を受け、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は強い怒りをあらわにした。

ウクライナ当局によると、この日の空爆で数十人の負傷者も出た。

5階建ての集合住宅が破壊されたほか、EU代表部と、近くのブリティッシュ・カウンシル(英国文化振興会)のオフィスも損傷を受けた。

欧州委員会のフォン・デア・ライエン氏は28日に声明を発表。外交使節団から「50メートルの場所に、20秒間で2発のミサイルが着弾した」とし、ロシアのミサイル攻撃が外交使節のすぐ近くを襲ったことを強い口調で非難した。

ウクライナ軍によると、ロシアはこの日、約600機のドローンと、30発以上の弾道ミサイルと巡航ミサイルを発射した。これは、今月のキーウへの攻撃としては最大規模だった。

犠牲者の多くは、キーウ南東部のダルニツキー地区にある5階建て集合住宅への攻撃で殺害された。

28日午前3時頃、この集合住宅をロシアのミサイルが崩壊させた。

現場では掘削機でがれきを撤去し、生存者の捜索が行われた。救助隊は煙がくすぶる建物の一部にのぼるなどして対応にあたった。

当局によると、死亡した子供4人のうち3人は2歳、14歳、17歳だった。ほかにも複数の若者が負傷したという。

Play video, “CCTV captures moments three strikes hit Kyiv”, 所要時間 0,4700:47動画説明, 28日のロシアのミサイル攻撃を捉えた映像(冒頭~1度目の攻撃、22秒~2度目の攻撃、42秒~3度目の攻撃)。音声はありません

西側諸国やウクライナの反応

アメリカ主導の外交攻勢によって戦争終結を目指す取り組みが進められていた中で、ロシアは28日未明にキーウを攻撃した。このことに、イギリスやEU諸国は激しい怒りをみせている。

イギリスのキア・スターマー首相は、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領が「平和への希望を破壊している」と非難。EUのカヤ・カラス外務・安全保障政策上級代表も、「緊張を高め、和平努力を嘲笑することを意図的に選択」していると指摘した。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ロシア政府は「交渉のテーブルではなく、弾道ミサイルを選んだ」とし、ロシアに対する「新たな厳しい制裁」の必要性を改めて強調した。

ロシア政府は「依然として交渉に関心がある」としているが、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長は、今回の攻撃はウクライナを恐怖に陥れるためにロシアは手段を選ばないということを、「改めて痛烈に思い起こさせる」ものだと指摘。ロシアは男性や女性、子供を殺害し、EUさえも標的にしていると非難した。

アメリカのキース・ケロッグ・ウクライナ担当特使は、ロシアによる住宅街への「甚だしい攻撃」が、ドナルド・トランプ大統領が追求する平和を脅かしていると述べた。

ドイツのフリードリヒ・メルツ首相も、「ロシアは再び本性を現した」と述べ、EU代表部が攻撃を受けた事実は、クレムリン(ロシア大統領府)の大胆さが増していることの表れだと指摘した。

ロシアが空爆したウクライナ・キーウの住宅地の場所を示す地図。オボロンスキー地区、デスニャンスキー地区、シェフチェンキフスキー地区、ソロミャンスキー地区、ドニプロフスキー地区、ダルニツキー地区、ホロシイウスキー地区が攻撃を受けている

Play video, “ロシアの夜間攻撃で多数の死者、キーウで捜索活動続く BBC特派員が報告”, 所要時間 1,3701:37動画説明, ロシアの夜間攻撃で多数の死者、キーウで捜索活動続く BBC特派員が報告

EUの報道官は、いかなる外交使節も標的にされるべきではないと述べた。今回の攻撃を受けて、ベルギー・ブリュッセルに駐在するロシア代理大使を呼び出したという。

英外務省も、ロシアのアンドレイ・ケリン駐英大使を呼び出した。

ゼレンスキー氏は、ウクライナの都市やコミュニティーへの攻撃は、数週間、数カ月にわたり「停戦と真の外交を求めてきた」すべての人に対するクレムリンからの明確な回答だと述べた。

一連のミサイル攻撃が起きる前日の27日には、ロシアのドローンがエネルギーインフラを攻撃し、ウクライナの10万世帯以上が停電に見舞われた。

当局によると、28日の攻撃により、ウクライナ中部ヴィーンヌィツャ州のさらに6万世帯で停電が発生した。

ロシア軍は、ウクライナ海軍艦艇も攻撃し、乗組員1人が死亡、複数人が負傷した。ロシア国防省は、攻撃では無人高速艇を使用し、ドナウ川河口付近の偵察艦「シンフェロポリ」を標的にしたと主張している。ウクライナ軍は、攻撃があった場所の詳細を明らかにしていない。

EU関係者が公開した、キーウ市内のEU代表部施設の被害をとらえた画像。キーウ市内のEU代表部施設がロシアの攻撃を受け、窓ガラスは吹き飛ばされ、天井の一部は崩落した

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画像説明, EU関係者が公開した、キーウ市内のEU代表部施設の被害の画像ロシアの攻撃を受け、キーウ市内の地下鉄駅に多くの人が集まっている。1人の女性はベージュとピンクのダウンジャケットを着て、緑の折り畳み椅子にもたれている。構内の階段に腰を掛ける親子や、ホームで横になる人もいる

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画像説明, ウクライナ軍は、ロシアの攻撃が続く間は避難所にとどまるよう国民に求めている。画像はキーウ市内の地下鉄駅に身を寄せる人々

欧州理事会のアントニオ・コスタ議長は、直近のロシアによるキーウ攻撃に「恐怖」を感じたと述べた。

EU代表部と同じ建物にオフィスを構えるブリティッシュ・カウンシルは、オフィスが深刻な被害を受けたため、追って通知するまで、来訪者の受け入れを停止すると発表した。

フォン・デア・ライエン氏は、EUがロシアに対する第19弾の制裁パッケージを準備中であることを明らかにしたうえで、今後数日中にロシアとその同盟国ベラルーシと国境を接する七つのEU加盟国を訪問すると発表した。

欧州委員会によると、フォン・デア・ライエン氏は29日にラトヴィアとフィンランドを訪問し、その後エストニア、ポーランド、ブルガリア、リトアニア、ルーマニアへ向かうという。

トランプ氏は、ゼレンスキー氏とプーチン氏を交えた首脳会談を開催し、戦争終結を目指す構想を掲げているが、その取り組みは行き詰っている。

ゼレンスキー氏はトランプ氏のこうした動きを支持している。しかしクレムリンは、プーチン氏とゼレンスキー氏が会談する可能性には否定的な姿勢を見せている。

このところの行き詰まりにもかかわらず、米当局は29日にニューヨークで、ウクライナ代表団と協議する予定だ。ゼレンスキー氏は、「安全の保証における軍事・政治・経済的側面」について協議することになるとしている。

ウクライナは、和平合意が成立した場合に備えて、将来的なロシアの攻撃からウクライナを守るための安全の保証について、欧州の支援国と協議している。今週には、ゼレンスキー氏とイギリスの軍制服組トップのトニー・ラダキン国防参謀総長が、キーウで会談している。

ロシアは、欧州諸国がウクライナに地上部隊を派遣することは認めないとしている。また、ロシア抜きのそうした議論の先には「道はない」と主張している。

BBCのドミトリー・ウラソフ特派員が撮影したキーウの被害状況を捉えた画像。レンガ造りの集合住宅の一部が破壊され、窓ガラスが吹き飛び、白い煙が上がっている

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画像説明, BBCのドミトリー・ウラソフ特派員が撮影したキーウの被害状況の画像。レンガ造りの集合住宅の一部が破壊され、窓ガラスが吹き飛び、白い煙が上がっているロシアの攻撃で破壊されたレンガ造りの集合住宅の前にがれきが散乱している。救助隊が黒く汚れた大きな白クマのぬいぐるみを抱えている

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画像説明, ロシアの攻撃で破壊された集合住宅と対応に当たる救助隊員らロシアの攻撃で窓が吹き飛ばされた建物の前に、市民がたたずんでいる

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画像説明, ロシアの攻撃で窓が吹き飛ばされた建物BBCのドミトリー・ウラソフ特派員が川の対岸から撮影したキーウ。朝焼けの空が広がる中、街から煙が上がっている

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画像説明, BBCのドミトリー・ウラソフ特派員が川の対岸から撮影したキーウ。朝焼けの空が広がる中、街から煙が上がっている

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