わずか1カ月で退任したルコルニュ仏首相

もはやフランスは、政治不安を飛び越して政治危機の状況にある。かつてのシャルル・ド・ゴール元大統領のように、現職のエマニュエル・マクロン大統領の辞任が無くしては収束しないのではないか。ただしそれで実現する安定もまた一時的である可能性は高い。なぜなら、金融市場がフランスに対して厳しい評価を突きつけているからだ。


10月6日、フランスのセバスティアン・ルコルニュ首相が辞任した。ルコルニュ氏は9月9日に首相に就任し、10月5日に組閣を行ったばかり。しかしマクロン大統領の意向を受けたルコルニュ氏が財政再建色の濃い陣営で組閣したことに、野党が一斉に反発した。これを受けてルコルニュ氏は組閣の14時間後に辞任することになった。


フランスのセバスティアン・ルコルニュ首相
フランスのセバスティアン・ルコルニュ首相(写真=© Patrice Normand/Leextra via opale/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons)


この事態を受けてフランスの長期金利は急騰、終値で3.71%と前営業日から0.6%ポイントも上昇した。かつて欧州連合(EU)ではドイツに次ぐ信用力を誇ったフランスだが、長期金利は今や債務問題を抱えるイタリアとほぼ同水準まで上昇、一方で、かつて債務問題に窮したスペインを大幅に上回るなど、信用力の低下が著しい状況である(図表1)。


【図表1】各国の長期金利の対ドイツ・スプレッド(10年国債流通利回り)

フランス政治危機は三つ巴の勢力図の下で展開している。つまり、マクロン大統領が率いる中道派(黄)と、ジャン=リュック・メランション氏が率いる左派(赤)、ジョルダン・バルデラ氏(青)が率いる右派による対立だ。白が黄に変わった“フレンチ・トリコロール”の下で、来年度予算を政争の具に、政治危機は展開されているわけだ。


マクロン大統領は、EUの財政ルールに従い財政緊縮を進めようとする。EUに属している限り、これは必要なプロセスであり、それはマクロン大統領が存続しようと退任しようと、つまり野党が政権を奪取しても、構図は変わらない。一方、国民のマクロン大統領への不満が渦巻く今が好機と、野党は来年度予算をテコに大統領を追い詰める。


左派だろうと右派だろうと財政拡大は難しい

フランスの次期の大統領選は2027年4月に予定されている。二期を務めたマクロン大統領は、憲法上の規定により、出馬できない。そもそもマクロン大統領が任期満了まで務めることができるか定かではない情勢でもある。ここで留意すべきは、次期大統領が左派から選ばれようと右派から選ばれようと、財政拡大は難しいということだ。


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