2回目の国賓として英国を訪問した米国のトランプ大統領。キア・スターマー首相との首脳会談を終えた後の記者会見で(9月18日、写真:ロイター/アフロ)
米国の巨大テック企業が英国への大規模な投資を相次いで表明し、欧州におけるAI開発の主導権争いが新たな局面を迎えた。
9月中旬、ドナルド・トランプ米大統領の国賓としての英国訪問に合わせ、米マイクロソフト、米グーグル、米エヌビディア、米オープンAIなどが、AIの計算基盤となるインフラ整備に合計で400億米ドル(約6兆円)規模の投資を行うと発表した。
しかし、この動きの持つ意味は投資額の大きさにとどまらない。
米英両政府がAIや量子コンピューティング分野での協力を「新たな特別な関係」と位置づける中、英国を欧州におけるAI開発のハブ(拠点)に押し上げ、技術覇権を巡る競争の潮目を変える可能性を秘めている。
外交の舞台で繰り広げられた投資表明
一連の発表は、9月16日から始まったトランプ大統領の訪英という、華やかな外交イベントを舞台に行われた。
最大の投資を約束したのはマイクロソフトだ。
同社は2028年までの4年間で英国に300億米ドル(約4.4兆円)を投じ、そのうち155億ドルをクラウドとAIインフラの拡充に充てる。
英国のデータセンター新興エヌスケール(Nscale)と提携し、2万3000基以上の高性能GPU(画像処理半導体)を導入する「英国最大のスーパーコンピューター」を建設する計画だ。
米ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)や米CNBCによると、グーグルも、今後2年間で50億ポンド(約68億米ドル、約1兆円)を投じ、ロンドン近郊に新たなデータセンターを開設する。
グーグルは、この投資が2030年までに4000億ポンド(約80兆円)の経済効果をもたらし、年間8000人以上の雇用を創出すると見込む。
AI半導体の王者エヌビディアは、パートナー企業とともに英国に最先端チップ「Blackwell(ブラックウェル)」を12万基導入すると表明。
欧州で最大規模のAIクラスターを構築し、英国をAIの「利用者」から「創造者」へ転換させるとした。
対話AI「Chat(チャット)GPT」を手掛けるオープンAIも、巨大AIインフラ計画の英国版「スターゲートUK」を始動させる。
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