【独占】カンヌで上映された新人監督による映画『見はらし世代』本編冒頭20分を先行公開

今年5月にフランスで開催された「第78回カンヌ国際映画祭」の監督週間で、日本人として史上最年少の26歳で選出された団塚唯我監督の初長編作品『見はらし世代』。10月10日からの劇場公開を前に、20分に及ぶ本編冒頭映像が公開された。

 本作は、団塚監督によるオリジナル脚本。主人公の青年・蓮(黒崎煌代)、結婚を控え将来に迷う姉・恵美(木竜麻生)、家族と疎遠になったランドスケープデザイナーの父・初(遠藤憲一)――。渋谷の街を舞台に、ばらばらになった家族が再び関係を見つめ直そうとする姿を描く。新人監督ならではの瑞々しい感性で、現代的な都市の風景と、普遍的な家族の機微を繊細に重ね合わせた人間ドラマ。

 今回公開された冒頭映像は、10年前の家族旅行のシーンから始まる。父・初が運転する車で、海辺の別荘に到着した高野家。荷物を運ぶ父母の横で、サッカーボールを蹴って遊ぶ少年・蓮の姿が映し出される。どこにでもある家族のひとときに見えるが、父の携帯電話が鳴り、建築コンペの最終選考に残ったという知らせが入る。仕事に戻ろうとする父と、「この3日間は家族に集中してって言ったよね」と不満を漏らす母・由美子(井川遥)。夫婦の間に漂う緊張を、幼い蓮は敏感に感じ取る。

 海水浴の支度をした蓮が、母を呼びに行くが部屋から出てこない。恵美が「大丈夫?」と声をかけても、母は「ママは横向きが好きなの」とだけ答え、ソファに身を横たえる。その後、父と姉弟の3人で海へ向かう場面へと続き、後に家族を分かつ“母の喪失”を静かに予感させる。

 やがて視点は現在へと移り、胡蝶蘭の配送運転手として東京を走る青年・蓮の日常が映し出される。配達の途中で偶然、数年ぶりに父と再会する彼は、失われた家族の時間を取り戻すように、再び過去と向き合うことになる。

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