(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年10月1日付)

先端技術分野での連携を発表した米国のトランプ大統領と英国のキア・スターマー首相(9月18日、写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

 ドナルド・トランプの大統領2期目が世界を塗り替えている。

 トランプとその政権および最高裁判所内の手下がつくり上げている独裁的体制が永続する可能性はかなり高い。

 だが、たとえ永続しなかったとしても、ただ単に1回起きたために世界を変えたことになる。

 1度起きたことは再び起き得る。これは将来に対する見方を変えるはずだ。しかし、その将来は米国だけによって決められるわけではない。

 中国も超大国だ。では、中国はこの新時代にどのような役割を果たすのか。

トランプとMAGAが一変させた米国

 まず米国から見ていこう。

 他の民主主義国は米国が自分たちと同じ中核的な価値観を持っていると考えていた。だが、この米国は明らかに同じ価値観を共有していない。

 トランプ自身が不満を原動力とし、ディール(取引)主導で、気まぐれだ。これだけでもトランプに対処するのが難しくなる。

 欧州外交問題評議会(ECFR)のセリナ・ベリンが加えて指摘するように、トランプの外交政策は「輸出された国内政策」だ。

 このため「トランプとMAGA(米国を再び偉大に)陣営は国内外で同じ3つの手法を使っている。排除、転換、従属だ」と書いている。

 米国内では、トランプ陣営は「ディープステート(闇の政府)」を排除し、リベラルな米国を国家主義的な米国へ転換しようとしている。

 海外でも同様に、同盟関係やその他のコミットメントを排除し、同盟国や友好国を従属国に変えようとしている。

 こうした目標は世界の大半にとって悪く、米国にとっては愚かなものだ。

 米ピーターソン国際経済研究所所長のアダム・ポーゼンは「新しい経済地理学」と題したフォーリン・アフェアーズ誌への寄稿で、この長期的な見方を取っている。

 第2次世界大戦後の世界では、米国があらゆるリスクに対する保険を他国に与えたとポーゼンは書いた。だが、米国が負担したコストが補償されなかったわけではない。

 他国は米国に投資し、自国経済を米国の投資家に開放し、米国に低利で資金を貸し、米ドルを世界の基軸通貨にし、米国の資本市場をグローバル金融の一大ハブに変えた。

 つまり、これは互恵的なディールだったわけだ。

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