フランスのマクロン大統領は5日、ルコルニュ新内閣の閣僚を任命した。国民議会(下院)の不信任で総辞職に追い込まれたバイル前内閣の顔触れがほぼ留任し、野党は直ちに反発した。
ルコルニュ首相は7日に国民議会で施政方針を示し、野党はその直後にも不信任に動く構えだ。就任したばかりの首相が早くも議会で正念場を迎えることになり、乗り切れるか見通しが危ぶまれる状況だ。
バイル前内閣の主要閣僚の大部分が再任されたことで、中道政策路線の継続が鮮明になった。ロンバール経済・財務相の後任には、マクロン大統領に近いレスキュール元産業担当相が起用された。
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昨年の国民議会選の結果、マクロン大統領の中道与党連合の勢力が下院で後退し、マリーヌ・ルペン氏が実質的に率いるRNが最大勢力となった。
Source: Bloomberg
極右・国民連合(RN)を実質的に率いるマリーヌ・ルペン氏は、マクロン氏の中道路線継続について、「見ていられないほどひどい。(RNは)言葉を失う」とソーシャルメディアで批判。RNのバルデラ党首も「首相には明確に伝えた。過去との決別か不信任か、どちらかだ。(新内閣は)明らかに継続が全てであり、国民が期待する過去との決別に完全に逆行する」とx(旧ツイッター)に投稿した。
国民議会でキャスティングボートを握る可能性がある社会党も、明確な方向修正がない限り、ルコルニュ内閣の不信任に賛成するとあらためて警告した。社会党の要求には、赤字削減ペースの緩和や富裕税の導入などが含まれる。
社会党の広報担当ピエール・ジュヴェ氏は5日、BFMテレビに対し、「政策が変わらなければ、社会党は不信任に動く。大統領も首相も実際には大筋で何も変えたくないと考えている」と語った。
少数与党のルコルニュ内閣が成立を目指す予算案には、ユーロ圏最大の財政赤字抑制に不可欠な歳出削減や増税が盛り込まれる見通しだ。分裂した議会で不人気な政府予算案を可決させるという難題に再び直面せざるを得ず、野党の反対で退陣に追い込まれた前任の首相2人の二の舞になりかねない。

レスキュール新経済・財務相
Photographer: Nathan Laine/Bloomberg
昨年の国民議会選の結果、マクロン大統領の中道与党連合の勢力が下院で後退して以降、フランス資産は売り圧力にさらされ、他の欧州諸国に比べ国債利回りが上昇。新内閣の閣僚発表を受け、外国為替市場では、ユーロの対ドル相場が0.2%安の1ユーロ=1.1718ドルとなった。
フランス国債のドイツ国債に対する上乗せ利回り(プレミアム)は、バイル前首相が8月に内閣の信任投票実施を求めると明らかにする前は65ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)にとどまっていたが、今は81bp前後に拡大した。


原題:Macron’s Continuity Cabinet Risks Another Government Collapse(抜粋)
— 取材協力 Matthew Burgess
(社会党の要求やRN党首の投稿内容を追加して更新します)

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