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2025年10月5日 13:10
テインシュイ・ユン BBCニュース
尊敬する人:マーガレット・サッチャー女男爵。個人的な目標:日本の「鉄の女」になること。
2度の挑戦に敗れた後、高市早苗氏(64)はついに長年の夢をかなえた。自民党の結党70周年にあたる年に党総裁に選ばれ、日本初の女性首相となる見通しとなった。
これまで複数の閣僚ポストを経験してきた高市氏はかつては、テレビ司会者、さらにその前はヘヴィメタルバンドのドラマーでもあった。そして今、自民党の新総裁としてスキャンダルで信頼を失った党を立て直し、台頭する極右勢力に対応するだけでなく、低い出生率と地政学上の緊張に直面する国という課題に直面することになる。

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画像説明, 自民党の総裁に選ばれた高市氏
1961年に奈良県に生まれた。父は会社員、母は警察官だった。政治とは縁遠い家庭環境で育った。
ヘヴィメタルのドラマーとして熱心に活動していた頃は、予備のスティックを何本も持ち歩くことで知られていた。激しい演奏でよくスティックを折っていたからだ。スキューバダイビングや車も好きで、愛車のトヨタ・スープラは現在、奈良の博物館に展示されている。
政治家になる前は短期間、テレビ司会者だった。
政治に関心を持つようになったのは、1980年代の日米貿易摩擦の最中だった。アメリカ人が日本をどう見ているのか何としても理解しようと、日本批判で知られたパトリシア・シュローダー下院議員(民主党)の事務所で働いた。
高市氏はそこで、アメリカ人が日本と中国と韓国の言葉や料理をごちゃごちゃに混同する様子を見た。日本がしょっちゅう、中国や韓国とひとくくりにされているのを目にした。
そして高市氏は、日本が自分で自分を守れなければ、自分たちの運命は常に、浅はかなアメリカ世論に左右され続ける――という結論に至った。
1992年に無所属で初めて国政選挙に出馬したが、落選した。
翌年に再挑戦して当選し、1996年に自民党に入党した。それ以降、衆議院議員として10回当選し、落選は1回のみ。党内有数の保守派論客としての評価を築いた。
これまでに経済安全保障担当相、経済産業副大臣、総務相などを歴任した。総務相としては歴代最長の在任期間を記録している。
2021年に初めて自民党総裁選に出馬したが、岸田文雄氏に敗れた。2024年には1回目の投票で首位に立ったものの、最終的に石破茂氏に敗れた。そして今回、3度目の挑戦で勝利した。今後、国会で首相に指名されれば、日本初の女性首相となる。

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画像説明, 高市氏は2014年9月、第2次安倍改造内閣で総務相に就任した
高市氏は確固とした保守派だ。伝統を損なうと力説し、夫婦別姓を認める法案に長年反対してきた。同性婚にも反対している。
ただし、最近はその論調をやや和らげている。総裁選の公約では、「家政士の国家資格化を前提にベビーシッターや家事支援サービスの利用代金の一部を税額控除」することや、「企業内保育施設や企業主導型施設が病児保育を実施する場合には、法人税の減免」をすることなどを表明した。
高市氏の政策には、自分の家族や本人の経験が反映されている。女性の健康に関する病院サービスの拡充、家庭内労働の待遇向上、高齢社会でのケア体制強化などが含まれる。
総裁選出馬の会見では、「私自身、人生で3回の看護や介護を経験しました。それだけに、介護や育児、お子さんの子どもの不登校などによって、離職される方を減らしたいという思いが本当に、本当に強くなっています。キャリアを諦めなくても済むような社会を作りたいと願っています」と強調した。
故・安倍晋三元首相の側近としても知られ、財政出動や超低金利などで知られた「アベノミクス」の経済政策を復活させると誓っている。
このほか高市氏は、A級戦犯が合祀される靖国神社を定期的に参拝している。
さらに、自衛隊の攻撃能力を禁じる憲法の制約を、緩和するようにも求めている。

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画像説明, 2014年8月15日に、他の閣僚と共に靖国神社に参拝した高市氏
自民党は1955年の結党以来、日本政治で圧倒的な存在だった。しかし、現在は経済停滞と人口減少への不満、そして社会に広がる国民の不遇感を前に、支持を失いつつある。
高市氏は党内右派に属している。その高市氏を総裁に選ぶことで、自民党は極右政党「参政党」に流れた保守層の支持を取り戻そうとしている。
自民党は衆参両院で少数与党となっている。高市氏自身も、総裁選の第1回投票後の演説でこの問題を認め、「野党の時にも支え続けてくださった岩盤支持層の皆さま、また保守層の方々、党員の皆さまから特に厳しいお声をいただきました」と話した。
さらに、「日本の今と未来のために自民党が変わらなければならない(中略)常に国益を第一に、バランス感覚を持って国家経営にあたる」覚悟を示した。
国会が高市総裁を首相に選ぶ首班指名は、10月15日に行われる見通し。

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