世界中の米軍幹部を集めて演説するトランプ大統領(9月30日、写真:ロイター/アフロ)

文官を外し、海兵隊基地で会合

 ドナルド・トランプ米大統領は9月30日、首都ワシントン近郊にあるクワンティコ海兵隊基地に将軍、提督ら約800人(タイム誌)を全世界から一斉に招集し会合を開いた。

 巨額のカネを使い、留守中の軍事的リスクを冒してまで呼び寄せたトランプ氏の狙いはどこにあったのだろうか。

(Trump Warns of ‘War From Within’ in Speech to Top Generals | TIME)

 米国防総省には、2024年6月時点で約285万人(現役将兵130万人、文官約80万人、州兵・予備役約75万人)が勤務している。

 だが、9月30日に開かれた緊急の将官集会には国防政策を立案する文官は招かれなかった。

(https://en.wikipedia.org/wiki/United_States_Department_of_Defense)

 トランプ氏は9月5日、国防総省(Department of Defense)を「戦争省」(Department of War)に改名する大統領令を発布した。

 1947年まで使用していた名称である戦争省を「復活」させることで、「米軍をより強力で力強い存在として印象付ける」(トランプ氏)ためだという。

(国防総省のサイトはすでに「戦争省」になっているが、公式に改名するには議会の正式承認が必要だ)

 トランプ氏は、さらにこう述べている。

「名称が戦争省だった頃の我々の輝かしい勝利の歴史は、誰もが認めるところだ」

 また、今やトランプ氏の最も忠実な部下の一人になったアイビーリーグ(プリンストン大学、ハーバード大学行政大学院)出身のピート・ ヘグセス国防長官は、名称の理由についてこう述べている。

「我々は防御だけでなく攻撃にも転じる。生ぬるい合法性ではなく、最大限の殺傷力を発揮する」

(アメリカ合衆国戦争省)

 将軍たちを集めた会合場所は、実は戦争省ではなく、58キロ離れたポトマック河畔にあるクワンティコ海兵隊基地だった。

 同基地は、大統領専用ヘリコプター「Marine One(マリーン・ワン)」の運行を担当する第1海兵ヘリコプター飛行隊の本拠地だ。

 ホワイトハウスの一部のような、直轄の基地である。

 今回の会合で蚊帳の外に置かれた文官の一人Z氏は、コメントを求めた筆者にこう呟く。

「クーデターを起こせるのは武器を持った兵士に命令を下せる将軍だけ。その将軍たちに全軍の最高司令官である大統領が忠誠を誓わせる。不気味さを感じる。兵士も将軍も忠誠を誓うのは米国憲法だけではないのか」

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