英国王室やアラブの国家元首のための18台

お気づきかもしれないが、今回の一連のファントムには、4代目となるIVが含まれていない。この世代は、英国王室やアラブの国家元首のために、18台だけが作られている。現存は16台といわれ、今回は手配が叶わなかった。

ファントム IVが最初に製造されたのは、故・女王エリザベス2世がまだ王女だった頃の1950年。エリザベス2世の夫、エディンバラ公爵からの、直接的な働きかけだったと考えられている。

ロールス・ロイス・ファントム IV(1950〜1956年/英国仕様)ロールス・ロイス・ファントム IV(1950〜1956年/英国仕様)

そのシャシー番号は、4AF2。ボディはバレンタイン・グリーンで塗装され、最新のインテリアを備えていた。これは、英国王室の御用達車両の筆頭が、デイムラーからロールス・ロイスへシフトしたことも意味した。

エリザベス2世は、女王へ即位した後の1954年に、フーパー社製ボディにATが組まれたファントム IV ランドレーを受領。また同王室のマーガレット王女や、グロスター公爵なども所有していた。

第二次大戦前へ遡る直列8気筒エンジン

技術的には、当時の他のロールス・ロイスや、傘下にあったベントレーと共通性が高く、試作車は存在しなかった。シャシーは、シルバーレイス用のロングホイールベース仕様。ブレースの追加で、補強はされていたが。

エンジンは、第二次大戦前に、本来はファントム IIIの後継モデル用として開発されていた直列8気筒。本調子なら、170馬力以上を発揮すると主張された。

ロールス・ロイス・ファントム IV(1950〜1956年/英国仕様)ロールス・ロイス・ファントム IV(1950〜1956年/英国仕様)

トランスミッションは、5台を除きマニュアルが組まれた。10本のボルトで固定するホイールに大型燃料タンクなど、専用装備も与えられている。

ファントム IIIをベースに確かな仕上がり

ボディはすべてコーチビルドで、HJマリナー社が9台、フーパー社が7台、パークウォード社と、フランスのフラネイ社が1台づつ提供している。スペインのフランシスコ・フランコ氏は装甲仕様を3台所有し、今でも2台はスペイン軍が保持している。

最も美しいボディは、イラク王族のために製造された、フーパー社によるものだろう。サウジアラビアのタラール・アール・サウード王子のために作られた、フラネイ社のドロップヘッド・ボディは、英国以外のコーチビルダーによる唯一のファントム IVだ。

ロールス・ロイス・ファントム IV(1950〜1956年/英国仕様)ロールス・ロイス・ファントム IV(1950〜1956年/英国仕様)

ベースとなったファントム IIIは、不具合が多かった。しかし、高水準の技術改良を施すことで、王室のお眼鏡にも叶う仕上がりを得ていたといえる。

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