欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は3日、非銀行系金融機関の規制を強化し、伝統的な金融機関と同等の競争条件を課す必要があるとの見解を示した。独フランクフルトで7月撮影(2025年 ロイター/Heiko Becker)
[アムステルダム 3日 ロイター] – 欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁ら複数の中銀幹部は3日、欧州は銀行規制を緩和すべきでなく、むしろ一部金融セクターへの規制を厳格化すべきとの見解を示した。欧州各国政府は、2008─09年の世界的金融危機後に導入された規制撤回に動くトランプ米政権に追随すべきかを議論している。規制による負担が投資や支出、ひいては経済成長を阻害していると主張する声もある。
こうした中、アムステルダムで講演したラガルド総裁は、非銀行系金融機関の規制を強化し、伝統的な金融機関と同等の競争条件を課す必要があるとの見解を示した。急成長を遂げた同セクターのリスクを抑制することが必要だとした。
投資ファンドや保険会社、年金基金などの非銀行機関はシャドーバンクとも呼ばれ、現在の総資産額は国内総生産(GDP)の約350%に相当するが、個人預金を受け付けないため銀行よりも規制が緩い。ラガルド総裁は「政策担当者がこの困難な環境に合わせて規制や監督を適応させることが極めて重要だ」と述べた。
その上で「銀行の基準を引き下げるのではなく、銀行に類似した業務を行っている、あるいは銀行セクターと密接な関係を持つノンバンクの基準を引き上げるべきだ。そうすることで、不公平な競争環境に対する銀行の懸念に対処できるだろう」と述べた。
また、金融危機時にはノンバンクが中央銀行の支援を求める可能性があることや、2008年以前のような金融政策の限界が再び浮上するリスクにも言及。銀行規制は簡素化すべきだが、緩和すべきではないとの考えも示した。
イングランド銀行(英中央銀行、BOE)のベイリー総裁も、金融危機後の金融規制が企業投資を制限し生産性成長の低下を招いたという主張に反論。世界金融危機後に厳格化された銀行規制が、その後の投資不足や生産性の伸び悩みの原因だとは考えていないとした。その上で、過去の危機の記憶が薄れつつある中、金融規制を縮小することの危険性について警告し、中央銀行は新たな潜在的脅威を注意深く監視する必要があると述べた。
市場操作を担当するECBのシュナーベル専務理事も規制緩和に反対の立場を示し、「底辺への競争」は不安定さを助長し、将来の危機の種をまくことになると警告した。各国政府は安定維持のため、現在緩和された規制を享受している金融機関への規制を拡大すべきであり、銀行への規制負担を緩和するという誘惑に抵抗すべきだと述べた。また、「ノンバンクやステーブルコインなど経済や銀行に新たなリスクをもたらす金融システムの分野が、イノベーションを阻害することなく適切に規制されるようにすべきだ」とも語った。
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