
「野獣の証明」と題した作品の前でネコの絵を手にする松下さん=2日、大和郡山市千日町の「ぎゃらりぃーカフェらんまん」
長野県南木曽町出身の放浪の画家、松下広実さん(70)の「猛獣展」が2日、奈良県大和郡山市千日町の生活介護事業所「みんなの広場らんまん」併設の「ぎゃらりぃーカフェらんまん」で始まった。21日まで。
20〜30号の油絵10点と10センチ四方の合板にアクリル絵の具で描いた作品約40点を展示。油絵は迫力あるライオンの絵が多く、朝日が昇る淡路島の浜辺や風景画もある。アクリル画はネコ、イヌ、恐竜など、動物を描いた作品が多い。
松下さんは「トラやライオン、クマなど猛獣が大好き。小品はネコをよく描く」と話す。
松下さんは青果業を営む家の三男として生まれ、中学卒業後は家業を手伝う傍ら絵を描き始めた。父からゴッホの画集を贈られて色彩の豊かさに目覚め、30歳の頃、ゴッホに憧れて岐阜県中津川市の画塾で油絵を学んだ。同市の市展で入賞したことも。
「絵で生活できるようになりたい」と家を飛び出したのは40歳の頃。京都府や奈良県、徳島県などを渡り歩き、お金がなくなると野宿した。その間、長男に見つかっては実家に連れ戻され、お金がたまると飛び出すの繰り返しだったという。
地域の人々と親しくなって差し入れをもらうなどしたが、盗難に遭って所持金や画材道具を失い、路上生活を余儀なくされた。そんな中で、生活介護事業所を立ち上げた須川映治さんと出会った。須川さんは松下さんに知的障害があることを知って障害者手帳の取得に奔走、立ち上げた生活介護事業所に松下さんを迎え入れたという。
現在、松下さんは大和郡山市内に住んでおり、昼間は同施設に通って絵を描き、創作意欲は旺盛という。松下さんの作品は奈良市の旅館などにも飾られている。
開場時間は午前10時〜午後3時。日曜定休。問い合わせは同施設、電話0743(53)7822。

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