10/1のニューヨーク証券取引所。株価は好調だがマネーゲームは危うい水準に(写真:AP/アフロ)

(藤 和彦:経済産業研究所コンサルティング・フェロー)

 米国人は統計上ではかつてないほど裕福になっている。 

 連邦準備理事会(FRB)のデータによれば、米国の家計資産は今年第2四半期に176兆ドル(約2京6400兆円)に達し、パンデミック以前から46兆ドル(約6900兆円)増加した。株式と住宅が記録的な純資産の増加を促しており、特に株価は2019年以降、ほとんどの期間で上昇を続けている。

 トランプ米大統領が各国に高関税を課し、FRBの独立性を毀損しかねない行動に出ても、株式市場は動揺しなかった。無敵だと言って過言ではない状態だ。

 足元の株式市場を牽引しているのは人工知能(AI)だ。だが、「巨額の開発資金を捻出できないのではないか」との懸念が生まれている。

 コンサルティング企業ベイン・アンド・カンパニーは23日「AI業界はデータセンターや関連インフラの支出に収入が追いつかず、2030年までに年間8000億ドル(約11兆8000億円)の赤字に陥る可能性がある」との分析結果を示した。

 AI企業の株価は期待先行で上昇しているが、「21世紀初頭のドットコム・バブルの再来となるのではないか」との憶測も流れている。

 市場ではAIに次ぐ期待の星として次世代原子力に注目が集まっている。AIデータセンターに必要な膨大な電力消費を賄う切り札だとみなされているからだ。  

 売上高がゼロにもかかわらず、時価総額が一時200億ドル(約3兆円)を超えた核エネルギー企業Okloがその代表例だ。

 だが、AI以上に実態が伴っておらず、株式市場の危うさがさらに強まった感がある。

 米国の家計資産は飛躍的に増加したが、その裏で家計や企業の借り入れが急増している。

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