海外投資家は、自民党の新総裁誕生が史上最高値圏で足踏みする日本株を再上昇へ導く起爆剤になると期待している。
5人の候補で争う4日の自民党総裁選は投資家の様子見姿勢を助長してきただけに、結果の判明で日本の政治不透明感はいったん和らぐことになる。特に有力候補とみられている高市早苗前経済安全保障相、小泉進次郎農林水産相の2人は物価高対策としての減税や現金給付、政府支出の拡大など成長重視の考えを示しており、株式市場にプラスに働くと予想する向きが多い。

自民総裁選の候補者
Photographer: Eugene Hoshiko/AP/Bloomberg
米マシューズ・インターナショナル・キャピタル・マネジメントのポートフォリオマネジャー、ハン・ドンフン氏は「総裁選の候補者らは市場寄りのアジェンダ期待、消費者マインドの改善、政治的混乱の後退をもたらす」と予測する。
国政選挙連敗の責任を追及され、昨年の総裁選勝利からおよそ1年でリーダーの座から降りる石破茂首相については「財政面での緊縮姿勢から、市場にとって人気のある選択肢ではなかった」とドンフン氏は振り返った。
主要な日本株銘柄の値動きを示す東証株価指数(TOPIX)は7月以降、日米関税交渉の合意などを好感する形で最高値を更新する展開が継続。しかし、総裁選が接近した直近1週間ほどは結果を見極めたいとの姿勢から上昇の勢いを失っている。そのため、政治的不透明感の後退は投資家から歓迎される可能性がある。
ゴールドマン・サックス証券の調べによると、これまでも自民党総裁選でのリーダー交代を機に相場が強含んだケースが多い。総裁選で首相が代わった直近7回のうち、4回は交代後の12カ月間でTOPIXは上昇したという。

本音は「誰でも」
今回の海外勢による楽観ムードを支えているのは、石破氏よりは安定感のあるリーダーが誕生するとの期待だ。石破氏は首相在任中、就任間もない昨年10月に当初の方針を覆し解散総選挙に踏み切り、2009年に自民党が政権を失って以来の敗北を喫した。今年7月の参院選でも自民・公明の与党が過半数を割り込み、日米関税交渉が決着したことを理由に、9月7日に辞意を表明した。
英ポーラー・キャピタルで、日本バリュー・ファンドの共同運用者を務めるクリス・スミス氏は「誰が後任になっても、石破氏よりは良い環境になるだろう」と話す。石破氏が解散総選挙の大勝負に出て失敗して以降、政治への懸念が市場にあったため、後継確定で不透明感が解消され、拡張的な財政政策への期待と共に中長期的に株式市場の追い風になるとみている。
ゴールドマンのストラテジストらも先週、自民党総裁選後に国内政治の先行き改善が見込まれるとし、TOPIXの12カ月先予想を3200ポイントから3400に引き上げた。
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これに対し英国で日本株の調査会社を率いるペラム・スミザーズ氏は、もしも自民党が「小林鷹之元経済安保相のようなサプライズ候補を選べば、有権者や市場とずれていることを示す恐れがある」とし、総裁選の結果次第で投資家心理が冷え込むリスクに言及した。
昨年の総裁選も1回目の投票で獲得票数1位の高市氏を2位の石破氏が決選投票で逆転し、予想外の勝利と石破氏が財政規律重視派とみられていたことも重なり、翌営業日のTOPIXは3%以上、日経平均株価は5%弱急落した。

もっとも、ポーラー・キャピタルのスミス氏は、サプライズがあったとしても日本の長期投資家は首相交代に慣れており、大きな動揺はないとの認識だ。2000年以降だけでも首相の数は12人に上り、「自民党は過去にも同じ状況に立たされ、そこから立ち直ってきた」と指摘。結果にかかわらず、投資家は今回の総裁選を「革命ではなく、進化として受け止める」と述べた。
共同通信が9月27、28日に総裁選の投票資格がある人を対象に行った調査では、新総裁にふさわしい候補者のトップは高市氏で、国会議員への調査で支持を最も集めているのが小泉氏。また、野党の首相指名選挙を巡る協議が不調に終わり、新総裁が新首相に就く公算が大きいと共同通信は30日に報じた。

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