本番 存分に楽しみたい 念願の根曳、高田大輝さん 榎津町・川船<秋うららー長崎くんち2025④>

力強いかけ声で威勢よく船を引く高田さん(中央)=長崎市元船町、おくんち広場

 暗くなったおくんち広場(長崎市元船町)で囃子(はやし)の太鼓や鉦(かね)の音に合わせて根曳(ねびき)たちのかけ声が響く。長采(ながざい)の笛の音が鳴ると川船を前へ後ろへ動かし「サー、ヨーイヤサ」。声を合わせて威勢よく回転させた。
 榎津町の川船は全長約7メートル、重さ約3トン。車輪や車軸も木製で、新調された1951年以降、大切に使われてきた。網打ち船頭が投網でとった魚を諏訪神社に献上しようと、川の激流の渦に翻弄(ほんろう)されながら船を急がせる様子を船回しで、川の波を根曳で表現する。
 根曳の一人、高田大輝さん(21)は万屋町出身で青山学院大3年生。町内の人に声をかけられ、11歳で小鉦を担当した。「観衆の中で圧倒されつつ興奮した、あの3日間は今でも覚えている」。「いつかは根曳も」と思ったが、次の奉納踊りは高校3年生で受験勉強真っただ中。一度は諦めたが、コロナ禍などの影響で3年延期され、10年ぶりの出演がかなった。
 春休みから進学先の東京で自主トレーニングを開始。7月末までテストがあり「稽古に遅れて参加するため、自分にできることは仕上げたい」と地下足袋でアルバイト先から自宅まで約6キロの走り込みや、ジムでの体力づくりに励んだ。
 7月下旬に帰省。約2カ月間、稽古に励んだ。「町の人や先輩方の理解があって東京の大学に在籍しながらくんちに参加できている自分はとても恵まれている。本番では、貴重な経験を存分に楽しみたい」

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