(CNN) 「アオカケス(英語名:ブルージェイ)」と「インカサンジャク(英語名:グリーンジェイ)」を交配させると何が生まれるのか――。これは冗談の出だしではなく、野生ではこれまで遭遇したことのない交雑種を記述することを目的とした新たな研究の主題だ。

だが、科学者を悩ませているより大きな疑問は、なぜこの謎の鳥が存在するのかということだ。

米テキサス大学オースティン校の生物学博士課程の学生、ブライアン・ストークス氏は「少なくとも部分的には気候変動によって生じた生息域の拡大が原因で、二つの種が交雑した脊椎(せきつい)動物として初めて観察された事例だと考えている」と述べた。ストークス氏は学術誌「エコロジー・アンド・エボリューション」に掲載された研究論文の筆頭著者。

鮮やかな色のインカサンジャクは南米や中米、メキシコ、テキサス州南部の一部に生息している。研究共著者で、テキサス大学オースティン校の統合生物学教授のティモシー・ケイト氏によれば、2000年以降、インカサンジャクの生息域はリオグランデ川沿いに数百キロ北に拡大してテキサス州サンアントニオ方面に広がっているという。

テキサス州中部の熱心なバードウォッチャーは、このエメラルドグリーンの鳥の目撃情報をSNSなどで共有して注目を集めている。ケイト氏は18年から、インカサンジャクの急速な北上を観察してきた。

ストークス氏は数年後、ケイト氏のプロジェクトに加わり、遺伝子分析用の血液サンプルを採取するために鳥を捕獲した後、野生に返した。ストークス氏は23年5月、SNSでカケスの目撃情報を探していたところ、フェイスブックのグループで興味深い投稿を見つけた。サンアントニオ郊外に住む女性が、ストークス氏やケイト氏がこれまで見たことのないような、カケスには見えない珍しい鳥の写真を共有していた。

この謎の鳥は、アオカケスの群れの後を追い、似たような鳴き声を発しているのが観察された/Brian Stokes/University of Texas
この謎の鳥は、アオカケスの群れの後を追い、似たような鳴き声を発しているのが観察された/Brian Stokes/University of Texas

ケイト氏によれば、ストークス氏から奇妙なカケスの写真について連絡があり、すぐに2人でカケスを探しに出かけることにしたという。

ケイト氏とストークス氏は今回の発見を、地球温暖化と土地の開発が重なり、動物の個体群が新たな生息地へと移動する際に生じる「ますます予想外の結果」だと表現した。そうした状況が、今回の場合のような熱帯種と温帯種といった予測不可能な動物間の相互作用につながり、これまで見たことのない生態学的共同体を形成する可能性があるという。

アオカケスとインカサンジャクの交雑種とみられる個体を捕まえるのには何度かの挑戦が必要だった。カケスなどカラス科の鳥は非常に賢いことで知られている。

研究では、謎の鳥にタグを付け、遺伝子サンプルの採取のために採血した。研究対象となった鳥はアオカケスとインカサンジャクの両方の特徴を示していることがわかった。両者はそれほど近縁ではなく、約700万年前に共通の祖先から分かれたと考えられている。

この鳥は背中と尾に青い羽毛があり、翼には白い斑点がちらばり、アオカケスに似ていた。しかし、アオカケスのようなとがった頭頂部はなく、目の上の斑点はアオカケスの特徴のひとつだった。この鳥は、アオカケスの群れの後をつけ、アオカケスに似た鳴き声を発した。しかし、インカサンジャクのようなさえずりも発していた。

研究室に戻ると、ケイト氏とストークス氏は遺伝子分析を実施し、採取したDNAをアオカケスやインカサンジャク、その他のカケスのDNAと比較。謎の鳥がオスのアオカケスとメスのインカサンジャクの子孫であることを突き止めた。

アオカケスとインカサンジャクの交雑種として知られるもう一つの事例は、1960年代に飼育下で誕生した。当時、両種の自然の繁殖地は約200キロ離れていた。この交雑種の標本はテキサス州の博物館に収蔵されており、今回野生で見つかったものと驚くほどよく似ている。

今回のような野生での交雑は現代でしか起こりえないかもしれない。アオカケスとインカサンジャクの生息域が重なり始めたのはこの10年ほどのこと。米東部全域に生息するアオカケスは郊外化や裏庭の鳥の餌箱の普及にともない、西方へ移動しつつある。

ケイト氏によると、テキサス州では最近、夜間の気温が上昇し、熱帯の鳥類にとってより住みやすい環境になった可能性がある。これがインカサンジャクの北方への拡大の理由かもしれないという。この二つの分布域はサンアントニオ周辺に集中しており、そこで驚くべき交雑種が見つかった。

ケイト氏は「何百万年も交流のなかった種が、突如として接触するようになった。これはおそらく、気候変動や生息地の改変といった人為的要因によるものだと考えられる」と述べた。

ケイト氏はアオカケスとインカサンジャクが同じ生息地を共有するようになった場合に何が起こるのかについて関心を寄せている。互いに争うのか。あるいは互いを無視して平和的に共存するのか。一つ確かなことは、アオカケスとインカサンジャクは互いを区別する能力が向上するだろうということだ。

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