パリから1時間、タイムスリップしたような街

フランスといえば、多くの人が真っ先に思い浮かべるのはパリ。エッフェル塔やルーヴル美術館、セーヌ川の風景は、誰もが一度は夢見る観光地だ。

しかし近年、観光トレンドとして注目されているのが「セカンドシティ・トラベル」と呼ばれる、オーバーツーリズム気味の人気都市から離れ、地方都市やまだあまり知られていない地域を訪れる旅。行列、人混みから離れてこそ可能な、その土地ならではの文化や食、自然をより深く体験できる旅のスタイル。

中でも今、最も注目すべきは、パリからわずか1時間強の距離にある「オー・ド・フランス」地方。ベルギーとの国境にも近いこの地は、歴史ある街並み、美食の数々、世界遺産、そして手つかずの自然が共存する宝箱のような場所。首都パリからの日帰り旅行も可能だが、滞在すれば、なお奥深さに魅了される地域である。

オー・ド・フランス地方の中心都市リールは、16〜17世紀のフランドル文化の影響を色濃く残す美しい街。レンガ造りの建築や石畳みの小道、リール建築の至宝とも言われる旧証券取引所「Vielle Bourse」など、まるでタイムスリップしたかのような趣が感じられる。

旧証券取引所など、フランドル・バロックの影響を受けた建物が立ち並ぶグランプラス(Grand’Place)広場。©NICOLAS BRYANT見逃せない美術館がいくつも

フランス最大の美術館のひとつ、リール美術館も見逃せない。ルーベンス、ドラクロワ、マネの傑作などを展示、美術愛好家にはたまらない魅力を放つ。

ルネッサンス、バロック、近代のそれぞれの時代の作品72000点を収蔵するリール美術館。© Benjamin Clipet 

日本の建築事務所SANAAが設計したと話題になったルーヴル・ランスは、2012年開館以来500万人を超える来場者を集めている。特徴あるエレガンスで透明感のある建物は、単なる美術館にとどまらず、演劇、コンサート、講演なども提供する文化的な十字路のような場所となっている。

ルーブル美術館のランス別館「ルーヴル・ランス(Musée du Louvre-Lens)」は日本の建築事務所SANAAが設計。© Manuel Cohenエレガントで透明感のあるMusée du Louvre-Lensの建築様式は、周囲の自然と調和している。美術館内には、レストラン、メディアライブラリー、アートパークなども。©Philippe Chancel

さらに、ユネスコ世界遺産にも登録されているゴシック建築の最高傑作、アミアンのノートルダム大聖堂も忘れてはならない名所。毎年夏にはプロジェクションマッピングによる幻想的な光のショー「クローマ Chroma」も開催される。壮麗な建築美に最新のデジタル技術が融合し、歴史と現代が共鳴する特別な体験は、ぜひ来年の旅のリストに入れておきたい。

アミアンの精華であり、フランスを代表するゴシック建築のひとつでもあるノートルダム大聖堂(Cathédrale de Notre-Dame)。全長145メートル、身廊のアーチの長さは42メートルと圧巻の大きさ。写真は、毎年夏に開催されるプロジェクトマッピングの時のもの。© Teddy Henin 他にも、壮麗な庭園とルネサンス様式の建築が特徴的なシャンティイ城(château de Chantilly)のある、シャンティイは、王室と芸術の魅力の面からもぜひ訪れたい。城内にはラファエロなどの絵画を展示するコンデ美術館も。© Vincent Colin

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