9月23日、国連総会で一般討論演説をする石破茂首相(写真:ロイター/アフロ)
先週行われた国連総会は、退任が決まっている石破茂首相の「最後の晴れ舞台」となり、その関連ニュースが報じられた。
だが私は、日本でほとんど報じられていない議論にも注目していた。それはAI(人工知能)に関するものだ。
「核兵器」に対しては国連主導でNPTが発足、では「AI」に対しては…
今年の国連総会ウィークでは、一般討論演説(各国15分ずつ首脳が行なう演説)を含めて、計12のプログラムが組まれた。その中の11番目が、9月25日に開かれた「AIのガバナンスに関する世界対話の開始に向けたハイレベル・マルチステークホルダー非公式会合」だった。
国連のホームページには、こう記されている。
<加盟国、オブザーバー、国連専門機関、そして多様なステークホルダーが一堂に会するこのハイレベル非公式会合では、国連の中に「AIガバナンスに関するグローバル対話」を設置するとともに、包摂的で説明責任のあるAIガバナンスの主な側面について検討します>
AIに関して、世界全体で管理するシステムを作ろうという話である。これは核兵器を例に取ると分かりやすい。
9月25日、国連本部で開催された「AIガバナンスに関するグローバル・ダイアログ立ち上げのためのハイレベル・マルチ・ステークホールダー非公式会合」で演説するアンナレーナ・ベアボック第80回国連総会議長(中央前列)(写真:新華社/アフロ)
ギャラリーページへ
核兵器は、国連の誕生と同じ1945年にアメリカが開発し、周知のように広島と長崎に使用した。戦後の1949年にはソ連も開発し、1964年には中国も核実験を成功させた。
そうした中、このままでは世界中が核兵器を保有し、紛争に再度使われてしまうという懸念から、国連が主導して、1970年にNPT(核不拡散条約)を発効させた。核軍縮、核不拡散、原子力の平和利用が3本柱だが、要は「P5」(国連安保理の常任理事国5カ国)以外には核兵器を開発させないようにする仕組みだ。かつ「P5」は、責任を持って自国の核兵器を管理するとした。
このシステムは、その後にインドとパキスタンが核保有国になったり、北朝鮮が「掟破り」をやったりした。だが曲がりなりにも、「長崎を最後に、核兵器を二度と使用しない」という「最後の一線」はキープしている。その意味では、半世紀以上にわたって機能してきた。
WACOCA: People, Life, Style.