グーグルが2026年に新たに「パソコンのOS」を出すことが正式に明らかになった。これは9月23日から3日間開催されたクアルコムのプライベートイベント「Snapdragon Summit」でグーグルのデバイスおよびサービス担当バイスプレジデントであるリック・オステルロー氏、そしてAndroidエコシステムをリードするサミール・サマット(Sameer Samat)氏によって語られたのだ。
リック・オステルロー氏
サミール・サマット氏
オステルロー氏は「これまで我々がパソコン向けに構築していたものと、スマートフォン向けに構築しているものは全く別のシステムであった。我々はこれらを統合するプロジェクトに着手している」と語った。
それを受けてクアルコムのクリスチアーノ・アモンCEOは「実物を拝見したが本当に素晴らしい。モバイルとパソコンの融合を見事に実現している」と興奮気味に語っていた。
左からクアルコムのクリスチアーノ・アモンCEOとリック・オステルロー氏
グーグルとしては、すでにパソコン的に使えるChromeOSと、スマホ向けのAndroidを統合する方向性を模索しているようだ。
ChromeOSとAndroidが融合することで、Android向けに豊富にそろうアプリが使えるという魅力がある。ただ「Android向けアプリが使える」というだけでは、グーグルがいまこの時期にパソコン向けのOSを出す意義は全くないだろう。
ChromeOSとAndroidを統合する主な目的はAIサービス「Gemini」にある。Geminiによって、ユーザーはあらゆることをAIエージェントであるGeminiに語りかけるようになる。
将来的にはひとつひとつのアプリを起動するなんてことはせず、やりたいことはすべてGeminiにお願いすれば良くなる。実際に背後でアプリを起動し、サービスにつなぎ、作業をするのはGaminiであり、ユーザーはGeminiがやった結果を待てばいい。
Snapdragon Summitでは、クリスチアーノ・アモン氏からAI時代の技術トレンドが語られた。そのなかでも「UIがAIになることで、アプリからAIエージェントにシフトしていく」と提言。AIエージェントがユーザーに対して、次の行動を提案してくれるようになるという。
こうしたAIエージェントが中心になるデバイスが登場するために、アモン氏は「OSやソフトウェアは完全に再設計される必要がある」と語る。
まさに、アモン氏の言葉を具現化するのが、グーグルによるChromeOSとAndroidが統合されたパソコンなのかも知れない。
アップルが2026年までの実現を目指すSiriの”パーソナル化”
AIで大きく出遅れているアップルは、2026年にSiriのパーソナル化を実現しようとしている。いまのところ、ちょっとおバカなSiriではあるが、2026年にはユーザーが持っている情報を理解し、ユーザーの行動を先回りして、サポートしてくれるように振る舞うとされている。
アプリ間でデータを橋渡しするといったことも可能になる見込みだ。Siriのパーソナル化は、iPhoneだけでなく、MacBookやiPadでも提供されるようだ。
グーグルでも、Pixel 10において、ユーザーの行動を先回りする「マジックサジェスト」を提供中だ。実際、思い通り動く感じはしないが、目指す方向性はグーグルもアップルも一緒だろう。
Snapdragon Summitでは、Snapdragon 8 Elite Gen 5が発表され「Personal Scribe」という機能が紹介された。オンデバイスでユーザーの感情や行動パターンを理解し、デバイス内に「知識グラフ」を作成。ユーザーの行動パターンなどを把握することで、ユーザーに次の行動を提案できるスマートフォンになり得る可能性が出てくる。
ユーザーからすれば、AIに提案されるのがスマホだけというのは不便だろう。やはり、パソコンで仕事をしているユーザーであれば、仕事中もAIから提案を受けて、効率的に作業をこなしたい。
となると、スマートフォンとパソコンの連携は不可欠なのだ。その点、アップルはiPhoneとMacBookの連携がとれるが、AndroidユーザーはWindowsパソコンと連携をとるというわけにはいかないだろう。
「どこででもAIを提供する」という点において、グーグル陣営に足りないのはパソコンだ。ChromeOSでは「他のデバイスとの連携」という点においては物足りない。
スマートフォンを中心にタブレットやクルマ、ウォッチなど、あらゆるものにGeminiが載り、すべてが連携する世界観を描くのであれば、パソコンは「Androidベース」が望ましいというわけだ。
クアルコムでは今回、コンピューター向けSoCとして「Snapdragon X2 Elite ExtremeとSnapdragon X2 Elite」を発表している。当面、Windows向けとなるが、2026年にはAndroidも動くSoCという位置づけに進化するかもしれない。
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