コンピュータエンターテインメント協会(CESA)は、9月25~28日までの期間、千葉県・幕張メッセにて「東京ゲームショウ2025(TGS2025)」を開催している。最新ゲームの試遊や企業の新規タイトル発表に注目が集まる一方で、ビジネスソリューションエリアでは地方自治体による積極的な出展もあった。本稿では、「ビジネスソリューションエリア」にて自治体の出展模様を紹介していく。

静岡市――助成制度を拡充し、クリエイターと企業を呼び込む

静岡市は、エンタメ産業と人材誘致を目的にブースを構えていた。来場者には名産のお茶が振る舞われ、親しみやすい雰囲気の中で、静岡出身クリエイターの作品紹介や市の支援制度についての情報が提供されていた。

静岡市は首都圏からのアクセスが良好でありながら、豊かな自然と都市機能を併せ持つ「住みやすさ」「働きやすさ」が特徴である。しかし、エンタメやデジタル産業における存在感はまだ大きくなく、「知ってもらう機会が少ない」という課題を抱えている。そこで今回のTGS出展を、エンタメ関係者に直接アピールする好機としたのだ。

特筆すべきは、企業立地促進助成制度の拡充である。新たに市内へ拠点を構える企業に対して、補助金やオフィス整備支援を用意しており、規模や業種に応じた柔軟な支援が受けられる仕組みとなっている。担当者は「視察も歓迎している」と語り、実際に現地を訪れることで静岡の可能性を体感してほしいと強調していた。

 

横須賀市――eスポーツとメタバースで描く未来都市像

横須賀市のブースは、eスポーツとメタバースをキーワードに展開されていた。市内にはすでにeスポーツチームが利用できる住宅施設を整備し、選手たちが生活しながら活動できる環境を用意している。こうした支援策は、都市としてのユニークな差別化につながっている。

また、横須賀市を会場としたeスポーツ大会も積極的に開催しており、地域住民と来訪者が交流できる機会を創出。地域振興と新産業育成を両立させるモデルケースとして注目されている。

メタバース関連の取り組みでは、仮想空間上に横須賀市の街並みや名所を一部再現した作品を用意し、オンライン上でその魅力を体験できる仕組みを紹介。「まずはバーチャルで横須賀を知ってもらい、その後にリアルで訪れてもらう」という段階的な誘致戦略を展開していた。担当者は「メタバースは単なる宣伝の場ではなく、都市と人をつなぐ新しいコミュニケーション基盤になる」と語り、デジタルとリアルの連携による町おこしの可能性を力強く訴えていた。

 

熊本県―3つの自治体が合同出展

九州からは熊本県の天草市、八代市、人吉・球磨地域をはじめとする三つの自治体が合同出展をしていた。この取り組みは熊本県の呼びかけにより実現したもので、単独の自治体出展ではなく、地域全体の力を結集して存在感を示す形となっていた。

ブースでは、各地域で活躍する企業やクリエイターが自ら作品を展示し、来場者に直接紹介。ゲームやアニメーション、映像制作、さらには地元の学生によるデジタルアートなど、多様な作品が並んでいた。来場者は開発者本人と会話しながら展示を体験できるため、地域のクリエイティブシーンの厚みを肌で感じられる構成となっていた。

熊本県は以前より、地域再生の一環としてデジタル産業の強化に注力してきた背景もある。今回の合同出展は、県全体でのエンタメ産業振興を外部に示す重要なメッセージといえるだろう。

ゲーム産業は地域活性化のカギとなるか

TGS2025ビジネスソリューションエリアにおける静岡市、横須賀市、熊本県の自治体出展は、地方創生の新しい可能性を示すものとなった。

静岡市は住環境と助成制度の両輪で企業誘致を図り、横須賀市はeスポーツとメタバースを軸に未来型都市像を提示。熊本の自治体群は、クリエイターと一体となって地域の潜在力を発信していた。

これらの事例は、ゲームやデジタル文化が単なる娯楽の枠を超え、地域経済やコミュニティづくりの中核として位置づけられつつあることを示している。自治体がエンタメイベントの出展や開催を行うことは今後も増えていくのかもしれない。

 

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