「サウダーヂ」(2011)や「バンコクナイツ」(2016)など独自の路線で秀作を発表してきた映像制作集団〈空族〉が、新作として台湾の原住民が暮らす集落を捉えたドキュメンタリー「潜行一千里 ILHA FORMOSA(イラ・フォルモサ)」が、11月22日(土)よりK’s cinemaほか全国で公開される。場面写真ならびに空族の富田克也・相澤虎之助のメッセージが到着した。
コロナ渦を含む2020年以降、幾たびも台湾に飛び、リサーチを続けてきた空族。ストリートの音楽に導かれて辿り着いたのは、原住民たちの集落だった。アミ族が暮らす花蓮県タパロン部落、そこから3000メートル級の中央山脈を越えたセデック族の部落、そして台湾の最南端にあるパイワン族の村。
失われつつある原住民の言葉でラップし始める若者たち、原住民の伝統音楽をアップデートして新たな音を生もうとするアーティストたちなど、空族は出会った人々と交流する。そして日本を含むさまざまな国に侵略された歴史も知ることに。だが、過去をはねのけるように人々は活き活きと踊り、歌い、笑う。
フィナーレは毎年タパロンで行われるアミ族最大の豊年祭だ。艶やかな原住民の衣装を纏った人々は、三日三晩踊り続ける。時空を超え、私たちも祝祭に身を委ねていく──。
公開期間中には空族の特集も予定されている。併せて注目したい。
──空族(富田克也・相澤虎之助)メッセージ
台湾と言えば私たちには一般的に大陸との緊張関係に常にさらされている“もうひとつの中国”という中華圏のイメージが強いのですが、原住民の部落に入るとそこにはかつてはオランダ、次に中国大陸、そして日本も含めて数々の強国からの植民地政策を経て、逆にそれらの異文化を取り入れながらも自らの部族とアイデンティティを守り続けている現在の原住民の人々がいました。その原色に彩られた姿は私たちの持っていた中華圏である台湾のイメージを一新し、西洋と東洋の様々な文化の異なる移民たちと、もともと住んでいた原住民たちが長い時間をかけて共に台湾という小さな島でお互いに“共和”の道を模索し歩んでいる姿が浮かび上がってきたのです。
このドキュメンタリーの中で台湾のラッパー、大支(ダーギー)が「台湾の特徴とはさまざまな文化や音楽が融合するところ。そう、メルティングポットなんだ」と語っていますが、特に2020年代から原住民の若者たちが自分たちのルーツミュージックを様々なジャンルの音楽とミックスさせて台湾独自の新しい音楽を創り出しています。そこから何が生まれ出づるのか?まさにこの現在進行形の台湾の姿を観ることはグローバル化、移民の時代を生きる私たち日本人にとっても大きなヒントになることだと考えています。
「潜行一千里 ILHA FORMOSA」
監督:富田克也 監督補:相澤虎之助 撮影:スタジオ石 録音:中村誠治 整音:山﨑巌、中村誠治 ドライバー:田中隆ノ介 カラーグレーディング:古屋卓麿 編集:富田克也、向山正洋 エクゼクティブ・プロデューサー:石崎尚 プロデューサー:Vincent Wang、筒井龍平 制作進行:蔡信弘、大野敦子、岩井秀世
企画:愛知芸術文化センター 製作:愛知県美術館 共同制作:札幌文化芸術交流センター SCARTS 制作・配給:空族
2025年/79分/16:9/5.1ch
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