<前節・川崎フロンターレ戦のレビュー>

中4日で迎えた多摩川クラシコ。味の素スタジアムを熱狂させた東京ヴェルディ戦に続き、絶対に負けられない戦いに臨むことになった。

松橋力蔵監督はこの試合に向けて長友佑都選手を従来の右サイドバックではなく左サイドバックで起用。川崎フロンターレで公式戦6試合連続ゴールと結果を残している右ウイングの伊藤選手を封じる策を講じた。さらに相手のキーマンに配給力のあるボランチを抑え込んで川崎の攻撃を分断する作戦に出る。

この狙いがズバリ的中する。長友選手が伊藤選手をマンマーク気味に対応して持ち味を消していけば、チーム全体としてもコンパクトな守備を保ってボランチに自由を与えず。パスの出どころを消し、出先を潰すことで試合の主導権を握っていった。

過去対戦は4連敗中、しかも直近3試合がいずれも0-3という屈辱的なスコアで敗れていたこともあり、多くの選手が“先制点”をキーワードに挙げていた。そのポイントを東京がクリアする。

前半23分、長友選手からボールを受けたマルコス ギリェルメ選手が左サイドを縦へ突破してゴール前に折り返し。これが逆サイドへ流れたところを長倉幹樹選手がワンタッチで柔らかいボールを中央へ戻すと、遠藤渓太選手がフリーで飛び込んでヘディングを叩きつけ、東京が待望の先制点をゲットした。

ハーフタイムに川崎が脇坂選手を投入してパスの出どころを増やしたこともあり、後半は押し込まれる展開が増えたが、それでも身体を張った守備で耐えながらカウンターを狙っていく。後半23分にはアレクサンダー ショルツ選手がマルシーニョ選手の決定機を迫力あるスライディングでブロック。後半アディショナルタイムにはゴールキーパーのキム スンギュ選手が驚異的な反応で相手のシュートを止めるなど守備陣も奮闘する。

試合終了間際にはゴール前で押し込まれて同点に追いつかれたかと思われたが、VARのサポートでオフサイドと判定されてノーゴールに。試合はこのままタイムアップ。青赤が相手の持ち味を消しながら自分たちの良さを出していく臨機応変さを見せ、2試合連続の無失点勝利という結果で連勝を収めた。

<今節のプレビュー>

過密日程を乗り越え、総力戦で今シーズン初の3連勝へ。

東京ヴェルディ、川崎フロンターレとの2連戦をともに1-0で勝利して迎える今節。中2日という厳しい条件は相手も同じ。ならば、連勝の勢いを加速させて一気に勝点を積み重ねたいところだ。

松橋力蔵監督は「駆け抜ける力、前を向いた時の矢印がみんなに伝わった瞬間のパワーは我々の強み。止まっている暇はないので、ピッチに立った選手には自分の良さ、ストロングをしっかりと発揮してもらいたい」とチーム状況を客観的に分析しながら今節のバトルに想いを馳せる。

気迫の2連勝はチームにとって大きな自信になったはずだ。室屋成選手が「この2試合は選手たちの戦う姿勢やプレーする全員の『やってやろう』という意志の強さが違った。ああいった勝ちにいく姿勢が重要」と振り返る。

大事な2連戦で勝利を手にしたからこそ、今節のアビスパ福岡戦が大切になる。チーム状況が上向いている手応えは、青赤ファミリーの誰もが感じとっているはず。それをしっかりと結果で見せていかなければならない。

今節は過密日程を受けてフレッシュなメンバーの起用も予想されるが、室屋選手は「今は誰が出ても高いパフォーマンスを出せると思うし、もっともっと競争力のあるチームにしていきたい。そういった意味でも楽しみです」と笑顔で展望する。そう、この試合は誰が出てもクオリティが落ちないように積み上げてきた“力蔵トーキョー”のチカラを示すゲームでもあるのだ。

対する福岡は現在リーグ戦3連敗中。相手は連敗を止めるべく懸命の戦いを見せてくることが予想されるが、そこは東京としても譲れない。アウェイでの前回対戦では東京らしさを全く出させてもらえず、指揮官が「終始後手を踏んだ悪いゲーム」と苦い表情を浮かべる結果となってしまった。チャレンジングなサッカーをしてくる福岡に対して、受けず、構えず、しっかりと先手をとるような試合を展開していきたい。自分たちの優位性や相手のウィークポイントを踏まえ、その状況を自分たちでどう打開していくかが重要だ。

相手を見ながら臨機応変な対応を見せた2試合を経て、青赤がいかなるサッカーを見せてくれるのか。そして出場機会を得た選手たちはいかにしてモチベーション高くチームを勢いづかせられるか。森重真人選手がチームの現状を踏まえて、3連勝への思いを語る。

「次の試合が勝負だと思っている選手は多い。この連勝はみんなの危機感や『ここが大事だ』という想いから生まれたものでもある。ここで一息つくわけにはいかないので、チームとしてしっかり3連勝をめざしていきたい」

ホームで迎える3連勝へのチャレンジ。継続性を大事にしながら、ピッチに立つ選手個々の持ち味をうまく組み合わせながら、チーム戦術と個人戦術の両面で上回って3連勝という結果を求めていくゲームとなる。

[松橋力蔵監督 インタビュー]

Q、中二日でアビスパ福岡戦になります。
A、まずリカバリーの部分を優先的に行いました。戦い方やいろいろなことは今日もある程度取り組みましたが、身体をしっかり動かしていくのは明日のウォーミングアップから、という考えです。期間は短いですが、やれることをみんなでやり切る意識です。

Q、今日の練習で特にフォーカスしたことはありましたか。
A、相手の攻守、セットプレーを含め、ポイントを絞って伝えました。福岡の印象については、守備が非常にチャレンジングでアグレッシブです。サイドと中央にクオリティの高い選手が揃っています。リーグ前半戦の対戦では最後の最後にやられてしまい、良いゲームではなかった悔しさが当然残っています。ただし、当時とはまた違う部分がありますし、しっかり自分たちの良さを発揮したいと考えています。

Q、福岡の紺野選手を含め、サイドの対応がポイントになると思います。
A、守備ではコンパクトに相手の良さをどう抑え、どう良い攻撃につなげられるかが鍵です。スライドも含めてその連動ができていれば、相手とのマッチアップでズレが生じる局面も当然ありますが、反対に、我々の守備がうまくハマった時には相手の選択肢をほぼ奪える状態になります。相手は積極的に守備へ出てくる分、背後には大きなスペースができます。しっかりボールをつなぐことができれば、また大きなチャンス、例えばショートカウンターにもつながると考えています。

Q、直近の2試合では、相手を見ながら流れを手繰り寄せるような戦い方ができていたと思います。
A、状況をきちんと見極められるようになってきたのは、成長であり、積み上げてきたことの成果だと感じます。私が伝えることや、用意したすべてのパターンだけで完結するわけではないので、相手のスタイルに応じてどこにスペースが開くのか、どんな傾向があるのかを踏まえたプレーが求められます。用意したことがうまくいかない時に何もなくならないよう、自分たちの優位性や相手のウィークを見据えながら、どう状況を打開するかが重要です。ゴール前からの逆算という発想を徹底できれば、またさらに良くなると思います。

[選手インタビュー]

<キム スンギュ選手>

Q、川崎フロンターレ戦をはじめ、直近の試合では判断スピードやコンディションの良さをプレーから感じます。
A、試合に勝つことで自信を持ってプレーするメンタルやコンディションが高まると思っています。今は、日々の練習で意識していること、取り組んでいることが試合でしっかりと表現できていると思いますし、直近の2試合で勝利できたことで、コンディションも非常に良い状態です。

Q、日々のトレーニングでは、どのような部分に注力して取り組んでいますか。
A、ゴールキーパーコーチから相手の特長を共有してもらい、どのような攻撃を仕掛けてくるのかを踏まえた練習メニューを組んでくれています。本当に良い練習ができています。良い練習が試合のパフォーマンスにつながっています。

Q、直近の2試合では無失点勝利に大きく貢献されました。チームとしてどのような成長や変化を感じていますか。
A、チームメイトがどのような特長を持っているのか、反対に私に対してどのようなプレーを求めているのか、というお互いの理解が深まっていることが理由の一つとして考えられると思います。私とプレーエリアの近いディフェンスやボランチの選手が、どこでボールを奪いたいのか、どこでボールを受けたいのかがスムーズにプレーとして表現できている手応えがあります。私自身、6月に加入してから、そこの連携やプレーの連動性が徐々に良くなってきていることが大きく影響していると思っています。

また、ディフェンスの選手だけではなく、チーム全体で「どのタイミングでプレスをかけるのか」「どうポジションをとるのか」というコミュニケーションが直近2試合の無失点勝利につながっています。ピッチ内での守備強度にも間違いなくつながっていますし、体力的に苦しい時間帯でも、選手それぞれのピッチ内でやるべきことがクリアになっていることが良い守備を促してくれていると思います。

Q、勝点37で並ぶアビスパ福岡の抑えるべきポイントを教えてください。
A、前線には高さと力強さを兼ね備えた選手がいますし、クロスボールの対応を特に意識しています。クロスボールからヘディングで合わせてくるケースも多くあると思うので、しっかりとした準備とポジショニングをとりたいと思います。福岡は前線の選手を目掛けてロングボールを多用するチームではありませんが、試合状況に応じて蹴られた場合の競り合いやセカンドボールの回収もチームとしてしっかりとケアをしなければいけないと思います。

<佐藤恵允選手>

Q、中二日で迎えるアビスパ福岡戦については、チームの総力戦になると思います。
A、今は良い形で連勝していて、チームとしても良い流れに乗っています。次の試合は6ポイントマッチなので、全員で戦って勝利できれば、さらに良い流れが生まれると思うので、今節は大事な一戦です。誰が出場しても、やることは変わりません。選手個人の特長やプレースタイルを最大限活かせるプレーをしていきたいです。

Q、今シーズンはまだ3連勝がない状況です。
A、リーグ前半戦の試合では、最後に失点してしまい0-1で負けてしまっている相手なので、まずはその借りを返したいです。今シーズン、3連勝できるチャンスがあったにも関わらず負けてしまい、そこからズルズルと勝てない試合が続いてしまいました。ここで勝てば4、5連勝と続ける勢いも出てくると思います。今の良い流れを3連勝につなげたいです。

Q、川崎フロンターレ戦では、前半に決め切れたからこそ、自分たちのペースで試合を進められたと思います。
A、前半から攻めているにも関わらず決め切れないシーンがあり、後半に失点してしまう試合が多くありました。チームとして良くなってきているからこそ、前半に決め切って流れを掴むことが、無失点勝利にもつながっています。チーム全員で「堅く守りながら、しっかりと仕留め切る」という意識で今節も試合に臨みたいです。泥臭く、勝利を求めていきたいと思います。

Q、ハイプレスでくる相手に対してどのように試合に臨みたいですか。
A、前線の選手がうまく顔を出すことによって、相手ディフェンスのマークを外し、空いたスペースをうまく突いて、相手がハイプレスをかけにくいプレーをしたいです。そうなれば、自分たちがボール握る時間が長くなり、試合も支配できると思うので、そこはしっかりと意識したいです。そして、今節こそゴールを決めたいです。石川直宏コミュニティジェネレーターからアドバイスもいただいたので、しっかりと決め切りたいと思います。

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