Bリーグの開幕を前に開催される、愛知県ナンバーワンを決めるプレシーズントーナメント「ナカジツ AICHI CENTRAL CUP 2025」。今シーズン指揮官が変わり、ロスターも大幅に若返った“新生・ファイティングイーグルス名古屋”(以下、FE名古屋)は、昨シーズンのチャンピオンシップ出場チームであるシーホース三河(以下、三河)に91-67で圧勝。間もなく始まる2025-26シーズンの「台風の目」に名乗りを挙げた。
「自分たちはすごく若いチームですし、コーチも新しいし、B1の他のチームから『FE名古屋はたいしたことない』と見られていると思うんですけど、それをうまく使っていきたい」。今シーズンより指揮を取るルーベン・ボイキンスーパーバイザーコーチ(SVC)は8月末に取材をした際、そう話していた。
その言葉の通り、FE名古屋は立ち上がりからフルコートのディフェンスで“急襲”。三河は決して油断をしていたわけではないだろうが、FE名古屋に主導権を握られ、後手に回った。
しかし46-30とFE名古屋が16点リードして迎えた後半、三河が息を吹き返す。エースの西田優大、ジェイク・レイマンを中心に猛追、3Qの残り3分に2点差まで追い上げた。どちらに転んでもおかしくない状況。勝負を分けたのは1本の3Pシュートだった。
三河のキャプテン・須田侑太郎は「3Qはいい流れでゲームを進められていたのですが、終了間際に保岡(龍斗)選手に左コーナーからの3Pシュートを決められたのが個人的にはデカかった」とFE名古屋・保岡の3Pシュートが分岐点になったと悔やんだ。
さらに「その前(残り1分20秒)にもベースライン(のスローイン)から保岡にイージーに決められていて、あの5点で流れを戻されてしまいました」。
保岡は3Q終盤に三河の逆転を許さなかっただけでなく、4Qの立ち上がりにもタフな3Pシュートを沈めて、FE名古屋の勢いを加速させた。最終的には6本の3P シュートを含むチーム最多21得点をマーク。ボイキンSVC新体制の初勝利に貢献した。
コーチの情熱と信頼が、心を強くしてくれる
保岡は昨シーズン、秋田ノーザンハピネッツ(以下、秋田)から加入した。江戸川大学3年次に特別指定選手として秋田に入団して以来、8シーズン在籍したチームを離れる決断をしたのは、FE名古屋がどのチームよりも保岡のシュート力を高く評価したからだ。
「昨シーズン、(HCの川辺)泰三さんのもとで、『良くても悪くてもシュートを打ち続けなさい』と教えられました。今シーズン、ルー(ボイキンSVC)になってからも 、『お前がヘジテイトしないで打ち切る姿を俺は見たい』と昨シーズンと同じことを言われました。そうした日頃のルーの熱い指導が、自分の心をすごく強くしてくれているんじゃないかと思います」
ボイキンSVCも保岡の「心」の変化を強く感じていると話す。「7月中旬に名古屋に来てからの2ヶ月間で、最も変化した選手はヤス(保岡)ですね。ビデオセッションなどでこれまでそれほど発言していなかったヤスが、みんなの前ですごく話をするようになりました。正直言うと、この変化は予期していませんでした。しかも彼はポジティブな発言が多いので、チームの雰囲気をよくしてくれています」。
FE名古屋にきて2シーズン目、保岡は杉本天昇とともにオフコートキャプテンに就任した。「ロスターを見ていただいたら分かる通り、今シーズンは本当に若い選手が多くて。Bリーグで何年もやっている選手は、並里(成)さん、笹山(貴哉)さん、JJ(ジェレミー・ジョーンズ)、ショーン(・オマラ)と自分くらいなので、いい時は今日のようにバーンと勢いに乗れるんですけど、悪い時は誰かが止めないとどこまでも下に行ってしまう。そこを言葉やプレーでまとめるのが僕たちの役割かなと思っています。
以前所属していた秋田では古川(孝敏)さんや田口(成浩)さんという素晴らしい先輩がいて、叱られながらも、いい背中を見てきている。だから次は、自分が行動で示し、背中を見せる番だと思っています」と新たな役割にやりがいを見出している。
「ルーのように、本当に選手全員を信頼している熱いコーチには出会ったことがないので、その期待に応えたい。
今シーズン、自分自身も勝ちたいですし、残りのキャリアの中で、若手選手を伸ばしていくことも自分の仕事の一つだと考えています。だから、今日のように背中を見せることとしっかりと発言でチームを鼓舞することをシーズン通してやっていきたい。そして、シーズンが終わった時に、若手選手に『成長できた』と感じてもらえたら、自分も嬉しいです」
保岡の背中を追って、若鷲はどこまで羽ばたいていくのか。新生FE名古屋の熱き戦いは、はじまったばかりだ。
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