横浜市で8月20日から22日にかけて「第9回アフリカ開発会議(TICAD9)」が開かれた。TICADはアフリカの開発をテーマとする国際会議で、1993年以来、日本政府がアフリカ連合委員会や国連などと共催している。9回目となる今回は、アフリカ54カ国のうち、49カ国が参加した。

 TICAD9は、成果文書として「横浜宣言」を採択して閉幕した。この宣言では、「経済」「社会」「平和と安定」という3分野を柱に日本とアフリカ諸国との協力策が並べられた。

 まず「経済」分野では、民間部門との連携により「安全で信頼できる人工知能(AI)を推進」することなどが盛り込まれた。また、「社会」分野では、保健システムの強化を通じてアフリカの社会開発を支援することなどが挙げられた。さらに「平和と安定」の分野では、国連安全保障理事会改革の機運が高まっているとの認識に立ち、安保理改革に共に取り組む考えが示された。

第9回アフリカ開発会議(TICAD9)のため来日したガーナ共和国のジョン・ドラマニ・マハマ大統領(右)と握手を交わす石破茂内閣総理大臣(2025年8月20日撮影) © 首相官邸ホームページ /wikimediacommons

自国優先ではなくパートナーシップ構築を

 TICADについて、アフリカ諸国のメディアはどのように伝えているのだろうか。

 南アフリカの英字紙メール・アンド・ガーディアンには、同志社大学高等教育研究所の客員教授を務めるセイフディン・アデム氏が、8月26日付で「TICAD9:会議の総括」と題した記事を寄稿している。

 アデム氏は冒頭で、石破首相が閉会式で「アフリカの人々と共に笑い、泣き、汗を流したい。日本はアフリカから学ぶべきことが多くあるという認識のもと、今後も協力し、共に未来を築いていく」とあいさつしたことを引用し、「感動的な声明だった」と記している。

 また、TICAD9において注目すべき点としては、「日本がアフリカと相互に利益を共有する関係性を構築する意欲を強めたこと」を挙げる。アデム氏は、「これは、多国間主義・自由貿易・法の支配を尊重する姿勢の表れ」だと述べ、「(自国の利益を最優先する)現米国政権のアプローチとは異なる、日本独自の姿勢だ」と、高く評価している。

アフリカ投資に二の足を踏む日本企業

 しかし、日本のアフリカへの投資額は、同じアジアの国であるインドやシンガポールと比べて「はるかに小規模」だ。アデム氏はその要因について、①日本企業がリスクを回避する傾向が強く、特にアフリカの政情不安を強く警戒していること、②アフリカ人と日本人の間の人的交流の機会が少ないこと、などが挙げられると指摘する。

 アデム氏はしかし、日本には、アフリカに対して、より積極的に関与すべき理由があると主張する。

 「日本の課題は、人口減少と高齢化だ。これに対し、アフリカは人口増加と若年層の失業率の高さに苦しんでいる。これらの課題に対して、日本とアフリカが共同で取り組めば、課題だったはずの状況が、双方にとって利益のある機会に変わる」

 アデム氏も書いている通り、TICADには多くのアフリカ諸国関係者が来日し、参加したにもかかわらず、日本以外ではあまり報道すらされていない。これは、アフリカ大陸において日本のプレゼンスがいかに低いかを改めて印象付ける結果だ。

 多国間主義や対外開発援助の取り組みは、トランプ大統領率いるアメリカの方針転換で逆風を受けている。アデム氏が指摘するような独自外交を、日本は本当に確立できるのだろうか。これは、日本の外交手腕を見せる大きなチャンスであると同時に、国際社会における日本の立ち位置を左右する、正念場でもあると言える。

 

(原文)

南アフリカ:

Ticad 9: The post-conference balance sheet

 

WACOCA: People, Life, Style.