韓国産業通商資源省の呂翰九通商交渉本部長は今週、ワシントンで3500億ドル(約51兆3000億円)規模の対米投資を巡り協議を行った。米移民当局による韓国企業の工場への異例の強制捜査で緊張が高まっており、韓国内では巨額投資を推進する価値があるのか議論が広がっている。

  米当局はジョージア州で建設中の現代自動車とLGエナジーソリューションの電気自動車(EV)向けバッテリー工場に対して捜査を実施。米韓はこの件をひとまず乗り越え、7月に合意した内容を巡り詰めの協議を進めている。

  呂氏は16日、グリア米通商代表部(USTR)代表と会談。先週には金正官産業通商資源相がラトニック米商務長官と協議した。

  金氏は通商協議の結果が今後の対米関係を左右するとの見方を示す一方、約束した対米投資の価値については自らも疑問を感じることがあると認めた。

投資に見合わず

  一連の会談は、韓国の自動車・部品に適用されている米国の関税が日本と比べて高水準にとどまっているという状況を打開しようとする韓国側の取り組みを示している。

  トランプ大統領はまだ対韓自動車関税を15%に引き下げる大統領令に署名していない。韓国当局者は関税がどのように執行されるのかが明確にならないまま、さらなるコミットメントに追い込まれる展開を警戒している。

  米韓は韓国製品に対する関税を15%とすることで折り合い、ホワイトハウスで先月開かれた首脳会談でもこの点を改めて確認した。だが、投資パッケージの構造や実行方法を巡り意見が分かれ、細部で詰めを残している。

  米国は日本と同様の枠組みを求めているが、韓国側はこれを政治的・経済的に受け入れにくいと難色を示している。韓国大統領府の金容範政策室長は先週、日本による5500億ドルの対米投資と同じ条件を受け入れることはできないと発言。その理由として両国の経済規模の違いや為替市場への潜在的な影響を挙げた。

  3500億ドルの投資に見合った恩恵は得にくいと指摘する声もある。経済政策研究センター(CEPR)のシニアエコノミスト、ディーン・ベイカー氏は先週のリポートで、トランプ政権の25%関税が適用されても、輸出減による韓国の国内総生産(GDP)への影響は約0.7%にとどまり、3500億ドルの投資よりはるかに小さいと分析した。

  「なぜどの国もトランプ政権とこのような取引に応じるのか理解に苦しむ」とし、「トランプ氏が求めている金額の20分の1を使って、輸出減で影響を受ける労働者や企業を支援すれば、よほど良い結果が得られるだろう」とベイカー氏は指摘した。

原題:Korea-US Trade Talks Remain in Deadlock After Raid Fuels Tension(抜粋)

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