日本で起業する外国人の在留資格「経営・管理ビザ」の要件が厳格化される。どのような背景があるのか。中国の事情に詳しいジャーナリストの中島恵さんは「同ビザを取得した人の約半数が中国人だ。移民仲介のブローカーによる不正が相次いでいる」という――。


さびれた金属片に描かれた五星紅旗

写真=iStock.com/NatanaelGinting

※写真はイメージです



抜け穴だらけの「経営・管理ビザ」

出入国在留管理庁は8月末、日本で起業する外国人が取得する在留資格「経営・管理ビザ」の取得要件を厳格化すると発表した。


現行では、資本金500万円以上、または2人以上の常勤職員を置くことに加え、事務所の設置という条件となっており、取得できる期間は3カ月~5年だ。改正後は資本金を6倍の3000万円以上とし、1人以上の常勤職員を置くことなどとする。


また、3年以上の経営・管理の経験を有すること、または経営・管理に関する修士相当以上の学位を持つこと、在留資格の決定時には、原則として公認会計士や中小企業診断士による新規事業計画の確認なども義務づけることになった。政府は10月中に省令の改正を見直す予定だ。


【図表】「経営・管理ビザ」在留者数の推移

出入国在留管理庁の発表を基に編集部作成



中国人の取得は約10年で2.8倍に

なぜ、政府は同ビザについて、取得要件を厳しくすることにしたのだろうか。


背景にあるのは、一部の外国人によるビザの不正取得の疑いだ。国会などでも議論されたが、一部の外国人は日本で不動産を購入し、それを民泊などにしつつも、経営実態がないケースがあり、問題視されていた。同じ住所に多数の企業がペーパーカンパニーを置いたケースなども判明しており、本来の目的から外れたビザ取得なのではと指摘された。


具体的に、どんなひどい不正があったかは以下に書くが、こうした問題があったことから、政府は同ビザ取得の厳格化に踏み切ったのだ。これに対し、SNSなどでは「遅すぎたが、やらないよりはまし」「もたもたしていると駆け込み申請があるのでは」と言った声が上がっている。


2024年末現在、外国人で同ビザを取得した人は約4万1000人。このうち中国人は約半数の2万人となっており、中国人の取得は2015年(約7300人)と比較して2.8倍に増加している。


同ビザは日本で貿易など事業を起こすためのビザだが、2014年までは「投資・経営ビザ」という名称だった。それが入国管理法の改正で「経営・管理ビザ」に名称が改められた。日本政府としては、外国人による起業を促進し、日本経済の活性化につなげようという目的だったが、ここ数年、中国人の取得目的は様変わりしていた。


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