9月10日、徳島県とKDDIは、南海トラフ巨大地震に備えた「事前防災」を推進するための包括連携協定を締結し、徳島県庁において、徳島県の後藤田正純知事とKDDI代表取締役CEOの松田浩路氏による締結式が行われた。
Skydioのドローンを持つ後藤田正純 徳島県知事、Starlinkのアンテナを持つKDDI代表取締役社長CEO 松田浩路氏松田社長が目指す「AIドローン」「Starlink」活用のプラットフォーム化
締結式の終了後、今回の徳島県とKDDIの包括連携協定について、松田社長に個別にお話を聞くことができた。
――まず最初に、昨年の石川県に続き、なぜ、徳島県と包括連携協定を締結することになったのかをお聞かせください。
松田氏
徳島県が石川県との取り組みをご覧になり、興味を持っていただいていたということがあります。
実は、今日もお話がありましたけど、後藤田知事は以前から石川県の馳浩知事と交流があったそうですし、政府から徳島県庁に派遣されているスタッフにも石川県へ派遣されていた方がいらっしゃって、「石川県と同じような取り組みができないか」という話がありました。
特に、徳島県の場合、南海トラフ巨大地震による津波などの被害の事前防災に取り組み、どうやって被害を食い止めるかというお話がありました。
――石川県との取り組みが注目されたのはどういう背景があるのでしょうか?
松田氏
石川県での取り組みについては、ひとつのモデルケースとして、各自治体にもお声掛けさせていただいたのですが、石川県では県警とも連携する取り組みが進められたことも評価されている部分があります。
締結式の終了後、松田社長に個別に話をうかがうことができた。AIドローンとStarlinkをプラットフォーム化して、各自治体や企業などのニーズに応えられるようにしたいという
災害時の対応は「非常時」のお話ですけど、警察との連携は「平時」も含まれます。
たとえば、行方不明者の捜索などは災害時だけでなく、平時でも行われますから、AIドローンを飛ばして、赤外線センサーで発見するといったことが可能になります。
こうした石川県での取り組みが他の自治体にも評価され、今回の徳島県のお話にも結び付いています。
余談としては、今日も少しお話がありましたが、後藤田知事は竹増さん(ローソン代表取締役社長の竹増貞信氏)とかつて同僚(共に三菱商事出身)で、KDDIの取り組みについて、お話が伝わっていたというのもあります(笑)。
――こうした自治体と取り組みついて、実際のソリューションに落とし込むにはなかなか難しいと思います。今回の徳島県のケースも含め、どこまで各自治体に合わせていくお考えですか?
松田氏
今回は「AIドローン」と「Starlink」を軸に、事前防災のお話を進めていますが、すべての地域について、それぞれ個別にカスタマイズしていくことは必ずしも効率的ではないと考えています。
ですから、AIドローンなどは全国1000カ所にドローンポートを設置して、共通のプラットフォームを構築し、Starlinkについても全国共通の活用方法を用意して、それぞれの地域特有の課題に対応する必要があれば、そこに合わせていくという考えです。
徳島県の場合、南部の3つの町が海に面していて、地震発生時は津波がもっとも早く到達すると言われています。
こうしたとき、72時間以内の人命捜索に取り組んだり、それ以降の被害状況の確認をドローンを使うことで、どのようにできるのかを考えます。
基地局が使えなくなってしまったときもStarlinkをバックホールにした基地局をどのように開設すれば、カバーできるのかといったことを含め、我々の方で設計して、ご提案するという流れになります。
これらは極端なカスタマイズしているわけではなく、「AIドローン」と「Starlink」をそれぞれひとつのプラットフォームとして作り上げているわけです。
――今後、47都道府県のいろいろな自治体からお話があったとしても対応できそうですか?
松田氏
そうですね。もっともわかりやすいのはドローンポートでしょうか。何カ所、設置すれば、どれくらいのエリアをカバーできますといったことはほぼ見えていて、それが今回のお話でも出た全国1000カ所のドローンポートです。
地域によっては細かい調整が必要になるケースもありますが、ああいったものをお見せするのは、もっともご理解いただきやすいと思います。
――今日の締結式では、後藤田知事がデジタル分野やテクノロジーについて、理解があることが伝わってきましたが、自治体によって、こうした分野の理解に差があるのではないでしょうか?
松田氏
それぞれの自治体の首長さんによって、テクノロジーに対するリーダーシップのようなものは多少の温度差があるかもしれません。ただ、それぞれの首長さんは地域のため、県民のためという気持ちはお持ちです。
今回は後藤田知事がテクノロジーをよくご存知なので、AIドローンやStarlinkを説明してもすぐにご理解いただき、お話がしやすかったのは事実です。ただ、我々は本来、影の存在であって、活用するテクノロジーについて、県民のみなさんに「こういう形で使えるんですよ」と提案していかなければならない。
ですから、首長さんをはじめ、各自治体の職員や関係者のみなさんといっしょにお伝えしていきたいと考えています。
また、そういったデジタルを活用するための人材も必要になってきます。我々も社内の取り組みとして、各自治体への出向という形でお手伝いをしていますが、実はそれぞれの地方の出身者が出向しています。
出向先の土地をまったくしらない者が出向くのではなく、その地域出身で、郷土愛のある社員が出向することで、それぞれの地域の特性を踏まえたDXを進めていくという考えです。
それぞれの地域でどんなことができるのかは、中央集権的な考えだけでは進められませんから、人材育成なども含め、そういった取り組みを進め、「つなぐチカラ」を高めていくことで、日本全国だけでなく、将来的には世界にも輸出できるようになっていくんだと期待しています。
――通信技術に限らず、テクノロジーは進化が早いですが、こうした自治体との連携について、導入した技術が遅れてしまうといった危惧はありませんか?
松田氏
確かに技術の進化は早いのですが、ドローンに関して言えば、進化のロードマップは見えています。
スマートフォンの初期のように、もの凄いスピードでどんどん進化していくというほどの状況ではありません。たとえば、ドローンポートを設置することで、そこで3年や5年といったスパンで運用していくことで、どんなことができるのかは、十分に見えてきます。
――ローソンについては今回、ドローンポートのお話がありました。それ以外にもローソンとはさまざまな取り組みをされていますが、進捗状況はいかがでしょうか?
松田氏
石川県や今回の徳島県を含め、防災拠点としてのローソンの活用は、ドローンポート以外にも太陽光発電や蓄電池の設置など、具体事例がいくつも出てきて、注目されていますが、発信のバランスやタイミングの関係上、まだ十分にお伝えできていない部分もあります。
――高輪のローソンで得られた知見などで、反映させられそうなものはありますか?
松田氏
ローソンに関して言えば、高輪のような「オフィスローソン」的な存在と、地域の拠点になるような「サスティナブルローソン」では、それぞれ使い方が違うと思います。
もちろん、ひとつひとつのテクノロジーにはそれぞれのローソンに活かせるものがありますが、ドローンポートをオフィスローソンに設置するわけにはいきません。
ですから、ローソンの全国1万4000店舗を区分というか、性格や特性で分類して、ここにはこんなテクノロジー、ここには蓄電を置こうといった形で使い分けていく必要があります。
今の段階では高輪のオフィスローソンなどの売り上げが大きいものですから、すごく効果があるように見えますが、元々、人が集まるエリアだからこその話です。
それがサスティナブルになってくると、それぞれの地域ではどれくらいでペイするのか、ドローンポートは何年でペイするんだろうっていう話になってきます。ですから、それぞれの地域への展開については、ユースケースを具体化した形で進めていきたいと考えています。
――災害対策はどうしても人とお金が必要になってきますが、どのようにビジネス的にペイしながら、社会貢献を進めて行かれるのでしょうか?
松田氏
こここそが我々がこだわってやっていかなければならない部分です。
我々は元々、サスティナブル経営を掲げていますが、社会貢献はいいですけど、それがしっかりと事業につながらないと、循環していかない。
社会貢献だけで終わってしまうと、いつか予算と言いますか、お金が足りなくなって、終わってしまうかもしれません。やはり、社会貢献をした結果、事業の成長にもつながるというのがあるべき姿です。
なので、ドローンについては事業会社を作って、昨年、はじめて黒字化ができました。
最初はやっぱり、赤字だらけなんですね。何かを輸送してくださいとか、山岳の救助で使ってくださいとか、そういう話ばかりなので、当然、赤字になっちゃうわけですが、それが点検サービスへの活用などで使われるようになり、ようやく事業として回るようになってきたわけです。
同じように、平時と有事で使えるようにしていくわけです。災害時だけだと、予算はつくかもしれませんが、平時にはつきませんよね。
じゃあ、平時はどなたにお金を支払っていただくんですかという話になるので、ここを我々はやり切らないといけない。
石川県の場合は、警察関係で活用されたり、民間企業の点検業務に使われたりしてきました。先ほどの海沿いのエリアの話でしたら、養殖場の監視もありますし、盗難防止などにも役立てることができます。
こういったことをそれぞれの地域の方に提案し、我々が事業として、展開していかなければならないということですね。
――昨年の石川県に続き、今回、徳島県と包括連携協定を締結しましたが、次はどこの自治体と取り組まれるのでしょうか?
松田氏
いろいろな自治体とお話をさせていただいているのですが、ひとつは防災意識の高いところはあるでしょうし、山岳地帯というのもあります。
石川県の場合は創造的復興というテーマがありましたし、今回は南海トラフ巨大地震への事前防災が目的です。そういったユースケースが当てはまるようなエリアを優先していく形になると思います。
――南海トラフ巨大地震については、今回は徳島県とのお話でしたが、同じ四国では高知県や愛媛県、香川県なども影響を受けると思います。これらの自治体ともお話をされていくのでしょうか?
松田氏
そうですね。今回、徳島県とお話ができましたので、これを波及させる形で、他の自治体ともお話ができればと考えています。
南海トラフ巨大地震だけでなく、能登の震災復興もありますし、豪雨災害という地域もあります。それぞれの自治体がお持ちの課題に答えられるように、取り組んでいきたいと思います。
発表したばかりのiPhone 17シリーズ/iPhone Airについて
――ところで、徳島の話から離れますが、今日(9月10日)って、米国でAppleの発表がありました。現地に行かず、ここにいらしてたので、ちょっと驚きました。
松田氏
実は、昨日は大阪・関西万博に行っておりまして、その後、夜中にこちら(徳島)に移動してきて、眠い目をこすりながら、発表を拝見しました(笑)。
新しいiPhoneは9月19日に発売されますけど、auでは「最新世代のiPhone au発売イベント」を開催する予定です。各メディアでも報道されると思いますので、ぜひ、楽しみにしていてください。
――今日はありがとうございました。発売日も楽しみにしています。
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