スペインリーグ開幕から4連勝で首位に立つレアル・マドリードは今季、幸先の良いスタートを切っている。

アンチェロッティの後任としてシャビ・アロンソを招聘(しょうへい)したチームは新時代をスタートするにあたり、今夏の移籍市場でリーグトップとなる計1億7900万ユーロ(約304億3000万円)を投じて4人を補強した。

昨季最大の課題であった守備陣の強化に早急に着手し、スペイン代表DFハイセン、イングランド代表DFアレクサンダー=アーノルド、スペイン人DFカレーラスの獲得に成功。さらに将来を見据え、今夏スペイン最高額となる移籍金6300万ユーロ(約107億1000万円)で、若きアルゼンチン代表MFマスタントゥオーノと契約を結んだ。

■平均年齢25・2歳に若返り

上記4人に加え、アセンシオとクラブワールドカップ得点王のゴンサロがトップチームに昇格。一方でモドリッチ、ルーカス・バスケス、バジェホが退団し、今季のメンバーは例年よりも多い25人となった(※マスタントゥオーノはBチーム登録)。30歳以上はクルトワ、アラバ、リュディガー、カルバハル、メンディの5人のみのため、平均年齢は25・2歳と若返っている。

すべてのポジションが2人以上でカバーされているが、中でもセンターバックは5人(ミリトン、アセンシオ、アラバ、ハイセン、リュディガー)、左サイドバックは3人(カレーラス、フラン・ガルシア、メンディ)、センターフォワードは3人(エムバペ、エンドリッキ、ゴンサロ)と、他のポジションよりも選手層が厚いことが分かる。

シャビ・アロンソ新体制のチームは準決勝で敗退したクラブワールドカップから始動し、その後のプレシーズンはわずか2週間で今季をスタートせざるを得なかったため、準備期間や休養期間の短さが懸念されていた。ここまでの4試合は対戦相手の多くが守備的に臨んできたことや退場者を出したこともあり、苦労する場面が何度もあったが、すべてに勝ち切る強さを見せ首位に立っている。

チームがこのような成功を収めるにあたり、シャビ・アロンソ監督はどのような手腕を発揮してきたのであろうか。

■エムバペ好調4試合4得点

システムに関しては、レーバークーゼン時代の3バックで臨むかどうかが注目されていた。クラブワールドカップからの公式戦10試合で8勝1分け1敗という好成績を残しながら、4-3-3、3-5-2、中盤ダイヤモンド型の4-4-2などさまざまなシステムをテストして試行錯誤してきた。ここ3試合はエムバペをワントップ、ギュレルをトップ下に配置する4-2-3-1を採用している。

前線を託されたエムバペはRマドリード初年度の昨季、前半戦こそセンターフォワードとして機能するのに苦しんだが、最終的にスペインリーグ得点王&ゴールデンシューの2冠を達成。今季は開幕から本領発揮し、4試合4得点、1試合平均1得点というハイペースでゴールを量産して得点ランキングトップに立ち、チームを勝利に導いている。

ギュレルを攻撃の中心に据えたことも成功の要因となっている。昨季まではあまり出番がなかったが、今季は監督の信頼を得て、ここまで4試合すべてでスタメン入り。正確なキックを武器にセットプレーのキッカーを務め、より攻撃的にプレーし、得点力に磨きをかけて2得点1アシストを記録している。

この夏、退団の噂が絶えなかったロドリゴに関してシャビ・アロンソ監督は、これまでビニシウスの聖域であった左ウイングで2人を競わせる決断を下した。これはビニシウスに対しては危機感を煽り、ロドリゴに対しては最も得意とするポジションでプレーさせるという点でプラスに作用しそうだ。それまでパフォーマンスの良くなかったビニシウスは第2節オビエド戦でスタメン落ちした際、途中出場から1得点1アシストを記録し、本来の姿を取り戻していた。

■カルバハルとミリトン復帰

新加入選手の全員が即戦力となっていることも大きい。中でもハイセンとカレーラスは瞬く間にスタメンに定着し、18歳のマスタントゥオーノは加入2試合目でいきなり先発した。さらに、前十字靭帯断裂の重傷で昨季の大半を棒に振ったカルバハルとミリトンの復帰は今夏最大の“大型補強”と言える。アレクサンダー=アーノルドとカルバハルの右サイドバックのポジション争いは今季、チームで最も激しいものになるだろう。

また、シャビ・アロンソ監督が構築した堅固な守備は現地で高評価を得ている。アンチェロッティ時代の低い位置の守備ブロックに別れを告げ、守備を怠ることが度々指摘されていたエムバペやビニシウスにもその意識を植え付けたことで、チーム全体でのハイプレスと前線からの守備に成功している。

さらに、シャビ・アロンソ監督に「すべての監督が欲しいと思うだろう」と絶大な信頼を寄せられているバルベルデ、攻守のバランサーとして今季絶好調のチュアメニがダブルボランチを形成して身を粉にしてプレーし、選手層の厚くなったDF陣が素晴らしいパフォーマンスを見せていることにより、相手に打たれた枠内シュートは4試合でわずか12本のみ。クルトワはあまりゴールを脅かされることがなく、例年よりも少ないセーブ数で済んでいる。ここまでの失点はわずか2。どちらもセットプレー(CKとPK)からで、流れの中からの失点はまだ1度もない。

■往復26時間のカザフ遠征も

Rマドリードはこの後、16日にホームで行われる欧州チャンピオンズリーグ(CL)初戦のマルセイユ戦を皮切りに、来月の国際Aマッチ期間までの3週間で公式戦6試合に臨む。その中にはマドリードダービーや、移動に往復26時間を要するカザフスタンでのカイラト・アルマトイ戦などのタフなゲームが含まれている。

シーズン開幕前からのけが人2人(メンディ、エンドリッキ)に加え、先週リュディガーが全治2カ月半~3カ月という重傷を負った状況下でこの過密日程に臨まなければならない。ここまで順調にチーム作りを進めてきたシャビ・アロンソ監督がこの最初の試練にどう立ち向かうのか、中でもベリンガムとカマビンガが復帰し、負傷者がゼロとなった中盤の構成をどうするかに注目が集まる。

【高橋智行】(ニッカンスポーツコム/サッカーコラム「スペイン発サッカー紀行」)




レアル・マドリードのシャビ・アロンソ監督(ロイター)


レアル・マドリードのシャビ・アロンソ監督(ロイター)




先制点を決めたレアル・マドリードFWエムバペは歓喜のパフォーマンス(ロイター)


先制点を決めたレアル・マドリードFWエムバペは歓喜のパフォーマンス(ロイター)

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