創造性豊かで美しいブラジルのフットボールに魅せられ、サンパウロへ渡って30年余り。多くの試合を観戦し、選手、監督にインタビューしてきた沢田啓明が、「王国」の今を伝える。

footballista誌から続くWEB月刊連載の第20回(通算198回)は、9月4日と9日に行われたセレソン(ブラジル代表)の2026年W杯予選ラスト2試合を振り返り、今後を展望したい。10月14日には味の素スタジアムで日本代表と対戦!

チリに○3-0、ボリビアに●1-0

 2023年9月に始まった2026年W杯南米予選が終わった。これまでの南米予選で、セレソンがこれほど苦しんだことはなかった。

 南米10カ国が総当たりのホーム&アウェイで対戦する現在の方式は、1998年W杯予選から始まった。セレソンが参加した過去5予選の成績は、1位が4回、3位が1回(2002年大会)。2006年大会予選以降は常に首位で突破していたのだが、今回は8勝4分6敗(24得点17失点)と大苦戦。3位から5位まで同勝ち点とはいえ、5位という史上最悪の成績に終わった。もしこれが前大会と同じく南米からの出場枠が「4.5」であれば、大陸間プレーオフへ回っていたところだ。

 3人の監督が指揮を執ったのも初めてで、監督別の成績はフェルナンド・ジニス(現バスコダガマ)が2勝1分3敗、ドリバウ・ジュニオール(現コリンチャンス)が4勝2分2敗、今年5月末に就任したカルロ・アンチェロッティが2勝1分1敗。

 アンチェロッティは、第15節の難敵エクアドルとのアウェイゲームをスコアレスドローでしのいだ後、6月10日の第16節でパラグアイを1-0で倒してW杯出場権を獲得。9月4日のチリ戦では、同じくホームで3-0と快勝した。

……

残り:2,014文字/全文:2,779文字
この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile
沢田 啓明

1986年ワールドカップ・メキシコ大会を現地でフル観戦し、人生観が変わる。ブラジルのフットボールに魅せられて1986年末にサンパウロへ渡り、以来、ブラジルと南米のフットボールを見続けている。著書に『マラカナンの悲劇』(新潮社)、『情熱のブラジルサッカー』(平凡社新書)など。

WACOCA: People, Life, Style.