長崎電気軌道は、路面電車全線と長崎市内を運行する乗合タクシーに、クレジットカード等のタッチ決済による乗車サービスを秋頃に導入する。
国土交通省の令和7年度「日本版MaaS推進・支援事業(観光促進型)」の採択を受け、三井住友カードの公共交通機関向けソリューション「stera transit」と、長崎MaaS推進事業の実証実験として25年秋頃から開始する。
実証実験では、クレカのタッチ決済乗車のほか、stera transitを活用した各種乗車サービスの展開、総合交通アプリ「Pass Case」での企画券販売、移動データ、消費のデータからの分析を行なう。
クレジットカード等のタッチ決済による乗車サービスの対象エリアは、長崎電気軌道の路面電車全線と、長崎市内を運行する乗合タクシー。各地区のタクシー事業者は、住吉タクシー(西北地区)、新城山交通(金堀地区)、文化タクシー(北大浦地区)、愛宕交通(矢の平・伊良林地区)、ラッキー自動車(丸善団地地区)。
タッチ決済対応ブランドは、Visa、Mastercard、JCB、American Express、Diners Club、Discover、銀聯。
長崎電気軌道におけるタッチ決済乗車方法
stera transitを活用した各種サービスは、路面電車では運転免許証を自主返納した人を対象にタッチ決済乗車の割引、事前申請で1カ月分の運賃合計に上限運賃を適用、乗合タクシーでは同一のカードで複数回乗車した場合、偶数回の乗車料金に割引を適用するといったものを検討している。
これらのサービスは、stera transitに新たに搭載された「事前認証機能」により実現。事前に窓口で乗車時に利用するクレジットカード等に権利を付与することで、タッチ決済による乗車時に割引料金や上限運賃を適用する。
割引サービスは、stera transitに新たに搭載された「事前認証機能」により実現
総合交通アプリ「Pass Case」での企画券は、路面電車と観光施設を掛け合わせたお得な商品を販売。販売予定の企画券は、長崎電気軌道の観光・商業施設優待付き1日乗り放題券、長崎電気軌道×乗合タクシーの24時間乗り放題券を検討している。
企画券を購入すると、Pass Caseで登録したクレジットカード等を改札の専用端末にかざすことで乗車や施設の入場が可能。また、同一のカードを特定の観光施設や商業店舗に設置した専用端末にかざすと、お土産などの購入品を割引価格で購入できる。
長崎市では、高齢化や生産年齢人口の減少により地域公共交通の維持が課題となっている。特に斜面地区の多い地形特性から、高齢者の外出機会減少が懸念されており、交通空白地への乗合タクシー導入が求められている。また、観光客増加により公共交通機関の利用が集中し、市民や長崎電気軌道への負担がかかっている状況だという。
こうした課題を解決するために、4月に長崎市・長崎電気軌道・三井住友カードが「stera transit長崎MaaS協議会」を設立。今回の実証実験に携わる事業者は、上記3者のほか、長崎国際観光コンベンション協会、十八親和銀行、FFGカード、ニモカ、JCB、西鉄エム・テック、小田原機器、QUADRAC。
実証実験の共同事業者
各事業者の役割
実証実験では、stera transitの乗降データのほか、三井住友カードが保有する利用者の属性データ・購買データを掛け合わせる、公共交通機関をどんな人がどんな目的で利用しているのかを把握する。これらのデータを収集することで、地域生活者に対する公共交通サービスの向上とオーバーツーリズムへの対策措置を検討していく。
また、今回の実証実験を通じて、キャッシュレス化やデータ活用でサービスを向上し、公共交通の利用を促進する。
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