インドの富豪ゴータム・アダニ氏が米国で直面している贈賄などに関する訴追の解決に向けた動きが行き詰まっている。事情に詳しい関係者が明らかにした。  

  インドの新興財閥アダニ・グループを率いるアダニ氏側と米当局との交渉はここ数カ月で停滞。米国・インド間の通商摩擦やインドによるロシア産原油購入をトランプ米大統領が批判していることなどが背景にある。非公開情報だとして関係者が匿名を条件に語った。

  トランプ政権の当局者は、米国で活動する著名弁護士らを含むアダニ氏側の代理人に対し、両国間の緊張が続く限り、訴訟を終結させる合意に至ることはないとの見方を示したとされている。

  米検察当局は2024年11月、インドの政府高官に賄賂を渡すとともに、その事実を米投資家に隠した罪で、アダニ氏らを起訴。検察側は起訴状で、アダニ氏らがインドで2億5000万ドル(約370億円)規模の贈収賄スキームに関与し、太陽光発電契約を得たと主張している。

  アダニ・グループは一貫して罪状を否認。被告はいずれも法廷に出廷していない。アダニ・グループとホワイトハウスはコメント要請に応じなかった。司法省もコメントを控えた。

Adani Group Chairman Gautam Adani Interview in Ahmedabad

アダニ氏

Photographer: Sumit Dayal/Bloomberg

  米国がインドからの輸入品に50%の関税を課したことで、両国間の緊張が一時高まったが、緩和の兆しもある。トランプ氏は最近、インドのモディ首相を「偉大な首相」であり友人だと呼んだ。 

  ブルームバーグ・ニュースは5月、アダニ氏側は今年始まった交渉で、訴追はトランプ政権の優先課題と合致しないと訴え、再考を求めていると報道。春先には合意に近づいているとの期待感があったが、交渉停滞はアダニ陣営に失望をもたらしている。

  訴追に関係するリスクのため、アダニ氏は米国に渡航できない。インド国内では大型買収に名乗りを上げるなど一定の資金調達に成功しているものの、訴追問題は米国の金融機関からの借り入れや取引締結の妨げになっている。

原題:Adani Bid to End Bribery Case Stalls Amid Frosty US-India Ties (抜粋)

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