小型車に特化した低価格ブランドへ
スペインの自動車メーカーであるセアトが、数年ぶりに新たな動きを見せた。欧州で販売するガソリン車をアップデートし、低価格ブランドとしての競争力を維持する方針だ。
セアトは近年、新型車の投入がなく、親会社フォルクスワーゲン・グループは兄弟ブランドのクプラに注力していることから、将来が危ぶまれていた。
イビサ(右)とアローナ(左)は来年、大幅改良を受けることが確定した。 セアト
しかし、暫定CEOに就任したマルクス・ハウプト氏によると、Bセグメント相当の小型ハッチバック『イビサ』とクロスオーバー『アローナ』は、来年初頭についに大幅改良を受けることが確定したという。
ハウプト氏は今月開幕したミュンヘン・モーターショーで、「現時点で、セアトはクプラを完璧に補完する存在です。それぞれ異なる市場に参入し、まったく異なる顧客層に対応しています。セアトへの投資は継続しており、来年は新型のイビサとアローナを発売する予定です」と語った。
「明確にしておきたいのは、セアトへの投資が続いているということです。さまざまな規制が存在する中で、多くの市場に対応できる柔軟性を確保することが、現時点では非常に重要だからです。したがって、2つのブランド(セアトとクプラ)は完璧に調和していると言えるでしょう」
ハウプト氏は改良の詳細についてはコメントを控えたが、2024年後半に公開された予告画像からは、デザインがわずかに変更されることが示唆されていた。
消費者にEVを強制することはできない
クプラはもともとセアトの高性能サブブランドだったが、2018年に1つのブランドとして独立。それ以来、セアトの役割や立ち位置は疑問視されてきた。今回明らかになった2車種のエントリーモデルへの大規模な投資は、2030年代に向けて、セアトが小型で手頃な価格のモデルのスペシャリストとしての役割を担っていくことを示唆している。
これに伴い、クプラはPHEVやEVに焦点を当て、さらなる高級化を目指すことができるになる。
セアトの現行ラインナップ
セアトの元CEOであるウェイン・グリフィス氏は、今年3月に同社を離れる前に、AUTOCARの取材に対して、イビサに搭載されるガソリンエンジンを次期ユーロ7排出ガス規制に対応させる予定だと語っていた。
小型で収益性の低いモデルにとっては大きなコスト負担だが、EVの需要がまだ高まっていない市場で販売を続けるためには重要かつ必要な一歩だ。
セアトのラインナップには、Cセグメントに相当する『レオン』と『アテカ』も名を連ねるが、どちらもクプラから高性能バージョンが販売されていることから、最終的には廃止される可能性がある。
グリフィス氏は、イビサとアローナへの傾注はEVからの撤退を意味するものではなく、「電動化という方向性から逸脱するつもりはありません。できるだけ早くゼロ・エミッションを達成するという目標に疑問を呈することはありません。その道筋については柔軟に対応しなければならず、独断的になってはいけません。消費者にEVを運転するよう強制することはできないのです」と語った。
来年、クプラから2万5000ユーロ(約430万円)未満の小型EV『ラヴァル』が登場する。グリフィス氏はこのモデルについて、「EVの民主化」に貢献するだろうと期待を寄せていた。
「2万5000ユーロ以下の小型の都市型EVが登場すれば、EVは普及していくでしょう。しかし、その間も、わたし達は(内燃機関車とEVの)両方を提供しなければなりません」
「2つのブランド、つまり、EVに明確に焦点を当てたクプラと、内燃機関に焦点を当てたセアトを構築しようとしています。両方の長所を最大限に活かしていると思います」
画像 日本では見かけない……けどカッコいい!【セアトのイビサとアローナを詳しく見る】 全63枚
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