[ワシントン 10日 ロイター] – トランプ米大統領の支持者で保守系政治活動家のチャーリー・カーク氏(31)が10日、ユタ州オレムのユタバレー大学で行われたイベントで銃撃され死亡した。
州公安当局は容疑者がなお逃走中だとしている。連邦捜査局(FBI)のパテル長官は、参考人として聴取した人物をその後釈放したと明らかにし、「捜査は継続している」と交流サイト(SNS)に投稿した。
ソーシャルメディアで拡散されている動画には、カーク氏が屋外で観衆に向けて演説している最中に銃声が鳴り響く様子や、同氏が椅子から落ちながら、首に手を当てている姿が映っている。
当局によると、容疑者はかなり離れた屋上から発砲したとみられる。約3000人が集まったイベントには警官6人が配置され、カーク氏の民間警備チームの責任者とも連携していたという。
トランプ氏は「偉大で、伝説的とさえ言えるチャーリー・カーク氏が死亡した。米国の若者の心を誰よりも理解していた。皆に、特に私に、愛され尊敬されていたが、もう私たちのもとにはいない」と投稿した。また、14日まで米国旗の半旗掲揚を命じたと述べた。
さらに、大統領執務室からの動画も投稿し、「私の政権はこの残虐行為やその他の政治的暴力に加担した者全員を、資金提供や支援を行っている組織も含めて全て探し出す」と強調。
「長年、極左の人々はチャーリーのような素晴らしい米国人を、ナチスや世界最悪の大量殺人者や犯罪者と比較してきた。こうした言説こそが今わが国で見られるテロリズムの直接的な原因で、すぐに止めなければならない」と主張した。
<若者票取り込みでトランプ氏再選に貢献>
カーク氏は保守派の学生団体「ターニング・ポイントUSA」の創設者で、2024年の大統領選ではトランプ氏への若者票の取り込みで重要な役割を果たしたとされる。
トランプ米大統領支持者で保守派コメンテーターのチャーリー・カーク氏が10日、ユタ州の大学で行われたイベント中に銃撃された。同日撮影(2025年 ロイター/Trent Nelson/The Salt Lake Tribune via REUTERS)
Xで530万人のフォロワーを持ち、人気ポッドキャストラジオ番組「ザ・チャーリー・カーク・ショー」の司会を務めていた。また、最近ではFOXニュースの番組「フォックス・アンド・フレンズ」の共同司会も務めていた。
親トランプ保守派インフルエンサーの1人で、大統領の政策を広める一翼を担う一方、主流メディアを頻繁に批判したほか、人種、ジェンダー、移民などを巡る「カルチャーウォー(文化戦争)」でしばしば挑発的な姿勢を取った。
7日には東京で参政党が主催したイベントに出席したほか、韓国でも先に講演を行っていた。
10日のイベントを撮影した動画によると、カーク氏は銃撃直前、聴衆から銃による暴力について質問を受けていた。
<政治的暴力が増加>
今回の事件の動機は不明だが、近年の米国では1970年代以降で最も多くの政治的暴力が発生している。ロイターの調べによると、21年1月にトランプ支持者が米議会議事堂を襲撃して以降、政治的動機による暴力行為は300件以上報告されている。
昨年の大統領選では、トランプ氏がペンシルベニア州で7月に行った選挙イベント中に銃撃を受け、軽傷を負った。その2か月後にも同氏を狙った暗殺未遂事件が発生した。
このほか、今年4月にペンシルベニア州のシャピロ知事の公邸が放火される事件が発生。6月にはミネソタ州で民主党の州議会議員2人とその配偶者が警官を装った男に銃撃され、議員1人と夫が死亡した。
共和・民主両党の政治家は今回の銃撃事件に失望を表明した。バンス副大統領は「主よ、彼に永遠の安息を与えたまえ」とカーク氏を追悼した。また、民主党下院トップのジェフリーズ院内総務は声明で、「政治的暴力はいかなる形であれ、いかなる個人へのものであれ容認できず、米国の価値観とは全く相容れない」と事件を非難した。
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