“未来のクラシック”を目指す英国製マイクSONTRONICS

2005年のNAMM Showで発表されたマイク・ブランドのSONTRONICS。多くの製品がイギリス国内で製造されており、創業者トレバー・コーリーによる独自設計回路や手巻きトランス、スムーズな高域のロールオフ特性などを特徴としている。アビイ・ロードをはじめとするプロ・スタジオや、エド・シーラン、エアロスミス、スティングなどのレコーディングで使用されてきた実績が、その品質の高さを物語っていると言えるだろう。今回、気鋭エンジニアの一人である諏訪桂輔にSONTRONICSのマイク5機種を試してもらった。彼のインプレッションから、SONTRONICSの実力を探っていこう。

諏訪桂輔

Reviewed by 諏訪桂輔

PLANETKINGDOM、studioMSRを経て、現在フリーランスのレコーディング・エンジニアとして活動。ポップスからバンド・サウンド、劇伴まで幅広く手がける。

Saturn 2

Price:¥339,900

Saturn 2

9つの指向性を持つフラッグシップ・モデル

 SONTRONICSのフラッグシップであるラージ・ダイアフラム・コンデンサー・マイク。5つの指向性(オムニ/サブカーディオイド/カーディオイド/ハイパーカーディオイド/フィギュア8)とその中間を含む、合計9つの指向性をデジタル・エンコーダーで制御することが可能だ。

 Suwa’s Comment 

 デザインが個性的でありながら、音はとても堅実。色付けは少ないですが、つまらない音ではなく、音楽の中でしっかりと抜けつつなじむサウンドになっています。私の場合、真空管マイクはレゾナンス・サプレッサーやマルチバンド・コンプで処理することも多いですが、Saturn 2はその作業も少なく済む印象です。レビュー用に借りている間、ボーカル録音の仕事はすべてSaturn 2で行ったほど気に入ってしまいました。電圧変化による正確な指向性の制御は、複数本を使用する録音時に高い精度でのマッチングが期待できますね。

Apollo 2

Price:¥459,800

Apollo 2

2基のリボン・モーターを備えた高感度なステレオ・マイク

 アクティブ・ステレオ・リボン・マイク。2基の双指向性リボン・エレメントを90度交差させたBlumlein方式の構造を採用している。オーケストラや合唱団、ドラムのオーバーヘッドなどに最適なモデルだ。リボン・マイクながら感度が高く、ゲイン調整が行いやすいのもポイント。

 Suwa’s Comment 

 全体的に高級感がありカッコいいデザインです。昨今の音楽が持つ厚みの中では、リボン・マイクのサウンドはある程度EQしないと抜けてこないこともありますが、Apollo 2はSN比が良く出力も高いので、特に処理していなくてもナチュラルかつ抜けてくるサウンドで録音ができます。ステレオ・マイクなので広がりのある音を録る際にスピーディにマイキングが可能です。ピアノやストリングス・セクションでメイン・マイクとして使うのはもちろん、ソロ・ギターのオフマイクとしてApollo 2を立てて空気感を演出するのもお勧めできます。

Halo

Price:¥41,800

Halo

ギター・アンプ用に設計されたレトロ・デザインのダイナミック・マイク

 スーパーカーディオイドの指向性を持つ、レトロなルックスのダイナミック・マイク。ギター・アンプ向けに開発されているのが特徴で、Haloを立てるだけで理想的なトーンが生まれるように周波数特性がチューニングされている。ギターのほか、ハーモニカやスネアなどにも適しているサウンドだ。

 Suwa’s Comment 

 Saturn 2と同じく、ダイアフラムをスプリングでつったデザインです。そのおかげか、メンバー全員で演奏するバンド録音時もクリアに録れます。周波数特性グラフを見るとキャラが強そうな音に感じますが、実際のサウンドは非常にナチュラル。ギター・アンプ前で聴いていた音と、Haloを通してコントロール・ルームのスピーカーから聴いた音が全く同じに感じられたことにはとても驚きました。オンマイクでの収録が主となるので、近接効果で持ち上がる中〜低域を周波数特性で制御しているのでしょう。ギタリストが作る音をそのまま捉えられるマイクになっています。

STC-20 Pack

Price:¥45,980

STC-20 Pack

アクセサリーをバンドルするコンデンサー・マイクのパッケージ

 ラージ・ダイアフラムのコンデンサー・マイクとショックマウント、ポップ・ガード、5mのXLRケーブル、ポーチが含まれるセット。手にしやすい価格で、録音に欠かせないアイテムを一度にそろえることができる。SONTRONICSサウンドを受け継ぐカーディオイドのマイクはボーカルに最適だ。

 Suwa’s Comment 

 この価格帯とは思えないくらいの高級感あるルックスです。塗装の質感や重量感も高級マイクに近いものだと感じました。サウンドも、エントリー・モデルながらフラッグシップのSaturn 2とかなり近い印象。奥行き感やつややかさではSaturn 2に軍配が上がりますが、宅録ユースを考えるとSTC-20のレンジ感のほうが後処理は楽に済むと思います。アコギで試したところ、実際に聴こえる音とマイクを通した音に差異がなく、オケ中でも抜けてくる音で録ることができました。中域の存在感があるため、パーカッションや激しめなピアノなどにも合うでしょう。

Solo

Price:¥24,970

Solo

自宅からステージまで活躍する超指向性のダイナミック・マイク

 350gと軽量なハンドヘルド・ダイナミック・マイク。超指向性の高出力カプセルがハウリングやひずみを最小限に抑え、音の明瞭さを保つ周波数特性により抜けるサウンドに。自宅での録音やライブ配信、ステージでのパフォーマンスまで、多彩なシチュエーションで活躍するマイクになっている。

 Suwa’s Comment 

 箱から出した瞬間にカッコいいマイクだと感じました。ブラック・アルマイト仕上げのボディは手に持った感触も良いですね。一般的なハンドヘルド型よりも高出力のため、ゲインを上げすぎることなくレベルを確保できるでしょう。SN比が良く、解像度が高いことも特筆すべき点です。周波数特性は5〜12kHzまでがかなり上がっていて明るいキャラクターなのですが、それによってボーカリストが自身の声を違和感なくモニターできるようになっています。クリーン〜クランチ・サウンドのギター収録でも、つややかな出音をSoloの特性がフォローしてくれるはずです。

製品情報

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