(英フィナンシャル・タイムズ紙 2025年9月9日付)

米国を訪問したNATOのマーク・ルッテ事務総長(右)と主要な加盟国の元首、ウクライナのゼレンスキー大統領(左から4人目)、8月18日撮影、NATOのサイトより

 もしウラジーミル・プーチンが平和を望んでいるのだとすれば、奇妙な方法で意思を示している。

 ロシアは先週末、ウクライナに対し、2022年2月の全面侵攻以来最大となる空爆を実施した。

 その翌日、ドナルド・トランプはロシアへの制裁を強化する用意があるかどうか問われ、そっけなく「ああ、ある」と答えた。

 米国大統領のコメントは、ロシア軍の最新の攻撃に対する思いつきの反応のように聞こえたかもしれない。

 だが実際には、4日に2時間以上かけて行われたトランプと欧州首脳10人の電話会議の結果を反映していた。

 欧州の指導者にはフランス大統領のエマニュエル・マクロン、欧州連合(EU)欧州委員長のウルズラ・フォンデアライエン、ウクライナ大統領のウォロディミル・ゼレンスキー、イタリア首相のジョルジャ・メローニ、フィンランド大統領のアレクサンデル・ストゥブが含まれていた。

対ロ制裁の強化をめぐる駆け引き

 電話会議の最中、トランプは時として汚い言葉を使い、対立的だった。だが、欧州首脳はそれには慣れていた。

 彼らはあともう少しで、ロシア産エネルギーを購入する国への二次制裁を強化し、ウクライナへの軍事支援を拡大するようトランプ政権を説得できると考えていた。

 ホワイトハウスは、欧州諸国がまず自らの問題を片づけるべきだと主張した。その言い分には一理あった。

 トランプは4日の電話会議で、まだロシアからエネルギーを輸入していることについてEUを批判した。

 欧州側は、EUによるエネルギー購入は今、戦争前の水準の20%まで下がっており、その大半はトランプのMAGA(米国を再び偉大に)運動と最も近いハンガリーとスロバキアのEU加盟国2カ国で説明がつくと反論した。

 妥協の結果として、欧州はハンガリーの首都ブダペストとスロバキアの首都ブラチスラバにいる友人たちに圧力をかけるようホワイトハウスに求めながら、ロシアからのエネルギー購入をすべて打ち切る取り組みを進めることになった。

 米財務長官のスコット・ベッセントは米NBCの番組「ミート・ザ・プレス」に出演し、目標はロシア経済に対する圧力を強めることと「米国とEUがこれを一緒にやること」だと認めた。

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