footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!

第83回は、W杯欧州予選の開幕で強豪国の現状が一通り見えたということで、ちょっと気は早いが、日本代表との対戦シミュレーション。前回W杯ではドイツとスペインを撃破したが、今のチームならどういう戦いになりそうかを予想してみた。

 W杯欧州予選が始まりました。

 少々複雑なフォーマットになっていまして、4チームのグループが9月スタート、5チームの方はすでに3月に始まっています。12グループの1位はストレートイン、2位はプレーオフに回ります。プレーオフにはネーションズリーグの成績上位4チームを加えた16チームで行い、4チームがW杯に出ます。欧州からは計16チームが本大会へ。プレーオフはちょっとややこしいので気になる方は調べてみてください。

 すでにアジア予選を突破した日本は米国遠征。メキシコに0-0、米国に0-2とW杯だったらグループステージ敗退濃厚の結果ですが、メキシコ戦に関しては手応えをつかめたと思います。一方、先発をすべて入れ替えた米国戦は全く違う展開になりました。ハイプレスとビルドアップのところでかなり差が出てしまったわけですが、良かった方のメキシコ戦を参考にW杯での可能性について考えてみたいと思います。

30分間であれば、世界屈指のハイプレス

 メキシコ戦は日本代表にとって試金石的な試合だったと思います。W杯中堅国同士の一戦だったわけですが、手応えはつかめたのではないでしょうか。圧倒していたと言っていいでしょう。30分間限定でしたけど。残りの60分間をどうするかという課題はありますが、そこはそれほど深刻ではないと思います。

 メキシコ戦で明白だったのは、日本のハイプレスはかなり威力があるということ。あの精度と鋭さのハイプレスは世界でもなかなかありません。日本の特徴であり武器です。

 ただ、ハイプレスは90分間継続できません。20~30分間でいったん終息し、ハーフタイムを挟んで回復しますが、60~70分あたりで再び終息というのが相場です。稀にほぼ90分間貫徹するケースもありますけど、北中米の気候、ノックアウトステージの試合数が1つ増えて決勝まで行けば8試合になること、延長戦も何回かあるかもしれませんし、90分間ハイプレス×8試合はどう考えても無理だと思います。米国戦でローテーションすると威力を保てなかったという課題もありますし。

 しかし、前回のカタールW杯で日本はミドルゾーンからのコンパクトな守備をドイツ、スペインに対してやっていて、それなりに守れていて得点もしていました。ハイプレスができない時間の戦い方はたぶんできるのではないかと。なので、課題はむしろハイプレスが効いている時間帯に得点することですね。

 日本のハイプレスはスキルの高さに定評のあるメキシコに対して効果的でした。おそらく大半の相手には通用するでしょう。けれども、どうかわからない国もいくつかあります。

 欧州予選でポット1のチームが8つありますが、その中でもスペイン、フランス、ポルトガル、オランダですね。これにアルゼンチン、ブラジル、モロッコを加えた7チーム。このあたりはハイプレスが効かないかもしれない相手として想定されます。

 実際にはやってみないとわかりませんが、欧州予選が本格スタートしたので欧州勢に対して日本が勝てそうかどうか、プレスが効きそうかどうか、という観点で考えてみたいと思います。

🔹𝗦𝗔𝗠𝗨𝗥𝗔𝗜 𝗕𝗟𝗨𝗘🔹

積極的なプレスで相手を苦しめるも、次第に適応したメキシコ代表と激しい攻防を繰り広げます。
90分では決着がつかず、スコアレスで試合を終えました。

チームは移動を挟み、アメリカ遠征の2戦目アメリカ代表戦へ備えます。
次戦も熱い応援をよろしくお願いします📣… pic.twitter.com/ktlLoLEOSU

— サッカー日本代表 🇯🇵 (@jfa_samuraiblue) September 7, 2025

オランダには通用する、フランスにはイチかバチか

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Profile
西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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