米国のKKRやブラックストーンなど世界的な資産運用各社は、インドでの投資を強化し、ムンバイ在勤の幹部をアジア地域の主要ポストに起用している。アジアのプライベートエクイティー(PE、未公開株)市場で、インドの存在感が高まっている。

  現在7つのグローバルファンドがアジアPE部門の責任者または共同責任者をムンバイに置いている。ブラックストーンはミット・ディクシット氏、KKRはガウラブ・トレハン氏だ。5年前にはインドにこうした役職は一人もいなかった。

  ブルームバーグが公開情報と関係者の話に基づき試算したところ、各社が現地運用する資産は合わせて1000億ドル(約14兆7300億円)以上。地域の資産規模について、各社はコメントを控えるか回答しなかった。

  インド重視の動きは、中国を超えた投資先を探す世界的な資本フローの再編を反映している。

  南アジアの大国インドは力強い経済成長が見込まれ、インフラから製造業まで幅広い投資機会を提供している。株式市場はここ数年、堅調に推移し、企業の合併・買収(M&A)案件も増加。こうした条件が、買収ファンドにとってインドを日本と並ぶアジア戦略の中核に押し上げている。

  TAアソシエイツのアジア共同責任者に2022年就任したディラジ・ポッダー氏は「多くのアジア責任者は長年にわたり強固な実績とポートフォリオの成果を示し、チームを効果的に率いてきた」と指摘。

  「インドのPE市場は成熟した。案件規模は拡大し、バイアウト市場は厚みを増し、多様な出口戦略が生まれている」と語った。

日本に再参入

  一方で、企業の高いバリュエーションやテクノロジー系スタートアップの混乱は依然としてリスク要因だ。

  さらに米政府がインドからの大半の輸入品にかかる関税を倍の水準に引き上げ、世界でも最高クラスの50%にしたことは新たな逆風となっている。

  インドでは、国際的な投資会社がチームを拡充し、資産クラスの多角化を進めている。成長減速と規制リスクで投資先としての中国の魅力が薄れる中で、より高いリターンを狙っている。

  EYのムンバイ在勤パートナー、ビベク・ソニ氏によると、「多くのグローバルゼネラルパートナーのファンドが中国を除いたアジアファンドを立ち上げ、日本とインドに全体の50-70%を振り分け、他は東南アジアなどに配分している」という。

  ブラックストーンはインドで約500億ドルのPE・不動産投資を抱え、インドを同社にとって最も有望な投資市場と位置付けている。

  KKRも過去20年近くで約110億ドルを投じており、今後さらに加速する方針だ。共同創業者ヘンリー・クラビス氏は2024年に「次の100億ドルはこれまで以上のペースでインドに投資する」と述べていた。

  米ボストンに本社を置くアドベント・インターナショナルはアジア拡大の一環として日本市場への再参入を目指しており、その陣頭指揮をインド責任者のシュウェタ・ジャラン氏に託している。

  事情に詳しい関係者が匿名を条件に述べたところでは、同氏は昨年、オーストラリア・ニュージーランド拠点のスタートを支援した。

  その他、ブルックフィールド・アセット・マネジメントやPAG、TAアソシエイツの幹部も、ムンバイからアジア全体あるいは世界規模の戦略を統括している。

  こうしたインド重視はすでに投資銀行の世界でも見られており、インド株式市場の存在感拡大に伴い、現地のトップが地域でより大きな役割を担うようになっている。

原題:KKR, Blackstone Help India Become Asia’s Private Equity HQ (1) (抜粋)

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