東日本大震災のあと県内につくられた災害公営住宅では入居者の高齢化が進み、全体の半数近くの団地で高齢化率が50%以上であることがNHKの取材でわかりました。
1人暮らしの入居者が亡くなった後に発見される「孤立死」が依然として起きていることもわかり、震災の発生から11日で14年半となる中、どのようにコミュニティーを維持していくかが大きな課題となっています。

東日本大震災のあと、県内には17の市町村に合わせて5800戸余りの災害公営住宅がつくられました。

NHKが災害公営住宅を管理する県と市町村に取材したところ、ことし6月末から7月末の時点で、入居者に占める65歳以上の高齢者の割合が50%以上の団地が、全体のほぼ半数にあたる86にのぼっていることが明らかになりました。

自治体別に見ると、
▽釜石市が67.3%
▽大船渡市が52%
▽山田町が50%などとなっています。

また、去年10月1日時点の県全体の高齢化率である35.6%以上の団地は、4分の3にあたる75%にのぼっています。

こうした中、県によりますと、1人暮らしの入居者が亡くなった後に発見される「孤立死」は、
▽去年は6人
▽ことしは7月までに3人確認され
震災以降合わせて127人にのぼっています。

入居者の高齢化が進む中、自治会の役員の担い手を確保できない災害公営住宅も増えていて、どのようにコミュニティーを維持していくかが大きな課題となっています。

災害公営住宅のコミュニティーづくりに詳しい岩手大学の船戸義和客員准教授は、「これまでコミュニティーを支えてきた側の住民が高齢化などで支えられる側になり、地域の見守りの担い手が一気に少なくなっている状況だ。これまで地域をつないできた人たちがいなくなることで、コミュニティ−の崩壊や、孤立化を招くことにつながるおそれがある」と指摘しています。

【岩手 陸前高田 県内最大の災害公営住宅では】
岩手県陸前高田市にある県内最大の災害公営住宅では、高齢化や空き部屋の増加が進み、入居者どうしのつながりをどのように維持していくかが課題になっています。

岩手県陸前高田市にある「県営栃ヶ沢アパート」は、県内最大、301戸の災害公営住宅で、9年前の2016年に完成し、入居が始まりました。

自治会によりますと、当初は8割余りにあたるおよそ250世帯が入居していましたが、しだいに減少し、今月3日時点で入居しているのは208世帯と、およそ3分の1が「空き部屋」になっています。

自治会によりますと、高齢化が進んで亡くなる人が増えたことや、県による家賃の補助の縮小を理由に引っ越す人が出てきたことなどにより、空き部屋が増加したということです。

住民の高齢化は深刻で、県によりますと、65歳以上の高齢者がいる世帯は112世帯と半数以上を占めているほか、自治会によりますと、高齢者の1人暮らしの世帯も少なくとも4分の1はあるとみられるということです。

高齢化が進むことで、自治会役員のなり手の確保に苦労したり、清掃活動の参加者が減ったりしているということで、入居者どうしのつながりをどのように維持していくかが課題になっています。

2年前から2回目の自治会長を務める中川聖洋さん(83)は、「空き部屋が増えると共益費などを少ない人数で負担しないといけないので大変だ。高齢化も進む中、見守り活動や日々の声かけをしていきたいが、自治会だけでカバーするのはなかなか難しく、これからは福祉的な支援を必要とする人が増えてくるのではないか」と話していました。

こうした中、自治会では、住民の交流を図ろうと、毎朝、集会所の前でラジオ体操を行っていて、住民の安否確認にも生かされているということです。

また、入居者どうしのつながりをつくる機会にする目的も込めて、自治会の防災担当の住民がみずから計画する防災訓練を年に2回、行っていて、先月24日の訓練には、入居世帯のうち4割余りが参加しました。

自治会長の中川さんは、「まだ10年足らずの自治会なので、ようやく基盤ができたところだが、高齢化も進んでいるので若い世代を1人でも仲間に取り込んでバトンタッチし、私たちがつくった基盤を引き継いでもらいたい」と話していました。

陸前高田市では今年度、国の財政支援をもとにした県の委託事業として、市の社会福祉協議会が災害公営住宅などに住む被災者の見守り活動を行っていて、ことし7月末時点で51世帯が対象となっています。

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