セバスチャン・ルコルニュ氏が10日、フランスの首相に就任する。大規模な抗議デモが広がる中での政権発足であり、不人気な予算改革を推進しなければならない新首相を待ち受ける厳しい課題が浮き彫りになる。
前内閣で国防相を務めたルコルニュ氏は、この2年で5人目の首相になる。直近の2人の首相はいずれも、ユーロ圏で最大のフランスの財政赤字を大幅に削減する予算案を提出したことで退陣に追い込まれてた。
10日には「ブロコン・トゥー(Bloquons Tout、すべてを止めよう)」と呼ばれる草の根運動が抗議活動を行い、学校や地域鉄道への影響に加え、航空便の遅延や一部欠航を引き起こす見通しだ。労働組合も、緊縮財政だとする前政権の予算案に抗議し、9月18日に大規模なストライキを計画している。
セバスチャン・ルコルニュ氏
Source: Bloomberg
与野党を問わず多くの議員がマクロン大統領の政策路線の継続に反対を表明し、国民議会の解散・総選挙を求めている。少数与党を基板とするルコルニュ新政権が2026年度予算を成立させ、内閣不信任を回避するには、左派か右派のいずれかから支援を得る必要がある。
パリを拠点とするシンクタンク、ジャーマン・マーシャル・ファンドのリサーチアナリスト、ゲジーネ・ウェバー 氏は、誰が首相になっても、もともと困難な局面だと指摘。「今も昨年と同じ問題に直面しており、対立する政党同士が歩み寄る姿勢はほとんど見えない」とインタビューで語った。
10日の債券市場ではフランス国債が他国債に比べてわずかにアンダーパフォームし、長期ゾーンを中心に利回りが1ベーシスポイント(bp、1bp=0.01%)上昇した。フランスとドイツの10年債利回りのスプレッドは2ベbp拡大し、83bpとなった。
マクロン大統領はルコルニュ氏に対し「予算案の採択に向けて議会内の諸勢力と協議する」よう指示した。
セバスチャン・ルコルニュ氏
Photographer: Chang Martin/SIPA/AP Photo
ルコルニュ氏が新内閣の人事を提案するのは、その協議を終えた後となる。それまでは現内閣が暫定的に職務を継続する。
ルコルニュ氏(39)は、2017年にマクロン大統領が就任して以来、途切れることなく閣僚を務めてきた。今回は、予算案への支持を取り付けようと信任投票を仕掛け退陣に追い込まれたバイル氏の後を引き継ぎ首相となる。
バイル氏は、2026年の財政赤字を今年の見通しである国内総生産(GDP)比5.4%から、4.6%へと縮小する予算案を提出していた。
26年予算の成立は新首相にとって最初の試練だ。前任者と同じ道をたどらないためには、財政計画を早急に練り直し、マクロン大統領の政敵からも少なくとも黙認という形での支持を取り付ける必要がある。
極右政党・国民連合(RN)のマリーヌ・ルペン氏は9日SNSへの投稿で、マクロン大統領がルコルニュ氏を指名したことについて「最後の切り札を使った」と指摘し、国民議会の総選挙は避けられないとの見方を示した。
社会党も、自党の議員はマクロン氏が進めるアプローチには一切関与しないと表明。同党のフィリップ・ブラン下院議員はBFMテレビで「これは議会への侮辱であり、有権者への侮辱だ」と語った。
ルコルニュ氏は中道右派・共和党出身で、国防予算増額やウクライナ防衛への前向きな関与に向けたマクロン氏の取り組みなど、フランスの軍事力強化路線を積極的に支持してきた。
ルペン氏を含め極右勢力との関係も良好とされる。RNの指導部は、ルコルニュ氏を支持するかどうかについて明言を避けているが、党首のジョルダン・バルデラ氏はただちに否定する姿勢は示さず、「新首相について、幻想を持たず、行動や予算に関する方針、それらがわれわれのレッドラインに合致するかどうかで判断する」とSNSに投稿した。
原題:Macron’s New Premier to Face Protests on First Day in Office (1)(抜粋)
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