マナワツ・ターボス(ニュージーランド)に派遣された濱野 隼大選手と辻野 隼大選手のジュンタ&ハヤタコンビ。2025年2月にチームの一員となったばかりのハヤタこと、辻野選手は、海外留学は初めての経験だそうです。8月9日に行われたニュージーランド州代表選手権(NPC)ラウンド2、タスマン・マコ戦ではWTBで80分フル出場を果たし、ターボスのファーストキャップを獲得しました。日本とはまったく違う環境でプレーし、「楽しいですし、得られるものがたくさんあります」と充実した日々を送っていると話します。また、プライベートでは、思わぬ出会いもあったとか。2024-25シーズン、アーリーエントリーとして3試合に出場し、将来が嘱望される期待のルーキーにラグビーの本場で感じたこと、選手として成長するために取り組んでいることなどを語ってもらいました。 (取材日:8月27日)

高校時代に対戦した選手とまさかの再会!

昨シーズンの終盤、マナワツ・ターボスのヘッドコーチに就任することになっていたウェズ(ウェスリー・クラーク前ディフェンスコーチ)からターボス派遣のことを冗談ぽく「どうか?」と聞かれていて、6月初旬、レンズ(デイブ・レニーディレクターオブラグブー/ヘッドコーチ)から正式に打診されました。ニュージーランドに行ったことがなかったですし、海外留学の経験もなかったので、派遣が決まった時はすごく嬉しかったです。

ターボスへの派遣にあたりフォーカスしていたのは、ニュージーランドで自分のスキルがどれだけ通用するのかということでした。それと、英語力を身につけたいとも考えていて。神戸スティーラーズは選手、コーチ陣も外国人が多いので、彼らとコミュニケーションを取るには英語力が必須です。派遣期間中に英語力をしっかり向上させたいと思います。

7月12日に日本を出発し、ニュージーランドに来てから1ヶ月半が経ちました。生活について紹介すると、僕と(濱野)隼大さんはIPUニュージーランドの大学寮に住んでいて、寮にはもう1人日本人がいます。彼の名前は、高田 巧さんといって、1歳年上で、なんと京都工学院高校ラグビー部出身だったんです。ワッキーさん(森脇 光)とは高校時代の同期で、当時ロックでプレーしていたワッキーさんと一緒に4番、5番でプレーしたそうです。京都工学院高校の出身の、いっくん(上村 樹輝)のことも当然知っていますし、僕も京都成章高校出身なので、京都府予選で対戦したことがあります。それもあり、すぐに意気投合し仲良くなって、一緒に食事に行ったり、トレーニングしたりしています。

京都工学院高校出身の高田 巧さんとの2ショット。高田さんは高校卒業後に単身ニュージーランドへ渡り、クラブチームでプレーしているそう。

ラグビーが当たり前にある世界!

食事は寮で提供されるのですが、自炊もできるので、近くのスーパーに行って食材を買ってきて、ハンバーグや唐揚げなどを作って、3人で食べることもあります。そういう環境なので、日本食を恋しく思うこともなく、プライベートも楽しく過ごせています。

あと、さすがニュージーランドだな!と思ったことは、どんな公園でも必ずHポールがあることです。平日、休日にかかわらず、毎日のように、どこかでラグビーの試合があって、子供も、男の子だけでなく女の子もラグビーボールで遊んでいます。ターボスの地域貢献活動で小学生の指導を行った時も、最後に試合形式でタッチフットをすることになっていたのですが、子供たちがタックルしようと提案してきて、最終的にラグビーの試合になりました(笑)。やっぱりニュージーランドはラグビーが国技なんだなあと感じた瞬間で、そういうことを体感できるのも楽しいです。

スケジュールは、神戸スティーラーズとほとんど変わりません。例えば土曜日にゲームがあれば、日曜はオフで月曜、火曜と練習して、水曜日にオフ、木曜日に練習をし、金曜はキャプテンズラン。月曜と火曜は午前中にミーティングをして、昼からグラウンドで練習をしています。練習内容については、ウェズがメニューを作っているので、神戸スティーラーズでも行っていたトレーニングが多いです。それ以外の時間は、自主トレーニングをするなど、思い思いに過ごしています。

辻野選手お手製のハンバーグがこちら!アボカドと目玉焼きも添えられて、見た目も美味しそう!

 

時にはカフェでのんびりリラックス!お気に入りのカフェの1杯

 

マナワツ・ターボスの練習とは別に、IPUのジムで筋トレや有酸素、アジリティトレーニングなどを行っているそう。

ワクワクするようなプレーの連続に衝撃

ラグビーに関しては、フィジカルの強さが日本とは絶対的に違います。それにNPCが開幕する2、3週間前に選手が集まって大会に臨むこともあり、戦術というよりも個人が持っているフィジカルやスキルで戦うという感じです。フィジカルの強さはある程度予想していましたが、スキルも高いことに驚きました。あと、プレー選択における発想力も違うなと思いました。こんなところからボールが出てくるんや!ここでオフロードが成功するんや!と思うことが多々あって。ワクワクするようなプレーを間近で見られることも楽しいですし、プラスになります。
また、チームメイトには、2024-25シーズンをもって神戸スティーラーズを退団したナニ(・ラウマペ)がいるのですが、ターボスの中でもスキル、パワーが際立っていて、圧倒的な存在感を放っています。彼がスーパーラグビーのハリケーンズやオールブラックスでプレーしていた頃からプレー集を見たりしていて、神戸で一緒にプレーしていた時からすごい選手だなと思っていたので、短い期間ですが、吸収できるものは何でも吸収したいと思います。

左から濱野 隼大選手、2024-25シーズンをもって神戸Sを退団したナニ・ラウマペ選手、辻野 隼大選手、今シーズンからターボスでヘッドコーチを務めるウェスリー・クラーク前ディフェンスコーチ

実力を認めてもらえたラウンド2タスマン・マコ戦

こっちに来てからポジションは、基本的にはウィングでプレーしています。本来ならばスタンドオフやフルバックでプレーしたかったのですが、英語でコミュニケーションができないので、バックスコーチから現時点で一番実力を発揮できるポジションはウィングだと言われて。ウィングでのプレー経験がそれほど多くないので、すごく新鮮に感じています。それにスタンドオフやフルバックではゲームの組み立てを考えないといけないですが、ウィングは自分のプレーに集中できるのが新鮮です。ウィングでのプレーを楽しんでいますし、ニュージーランドに来る前にフォーカスしていたスキルも通用すると感じられて、良い感触を得ています。
NPCにはラウンド2タスマン・マコ戦でデビューすることができました。もともと隼大さんが選ばれていたのですが、その週の練習で怪我をしてしまい、試合前日、僕が出場することになりました。常に試合に出られるように準備万端だったので、選ばれた時は嬉しかったです。試合では、トライこそ決めることはできなかったですが、ボールタッチの回数も多くて、2度ほどチャンスメイクができ、デビュー戦にしては上出来だったかなと。その後の試合にも出ることができたら良かったのですが、メンバー入りすることができなくて…。ただ、チームメイトからはパフォーマンスが良かったと褒めてもらいましたし、メンバーに入るべきだとも言ってくれていたので、実力を認めてもらったのかなと感じることができて自信になりました。
NPCはラウンド10まで続くので、モチベーションを保ちつつ、自分に矢印を向けてチャンスが来たら活躍できるように頑張ります!それにターボスのBチームである、マナワツBの試合があるので、NPCで出場したラウンド2を含め、プレシーズンマッチから6週連続でゲームをしていて、このままいけば8週連続になります。マナワツBは仕事をしながらプレーしている人が多いのでチーム作りという面ではなかなか思うように進まないですが、個々のフィジカルの強さはターボスと引けを取らない。実戦を通じて学ぶことや得られることも多いので、練習に毎週の試合にと、日本にいた時よりもハードな毎日ですが、その分めちゃくちゃ充実しています。

ラウンド4ウェリントン・ライオンズ戦のアフターマッチファンクションでチームからファーストキャップのネクタイが贈呈されました。

切れのあるステップと空中戦の強さを磨く!

ターボスでの目下のライバルは、隼大さんです。ウィングと同じポジションでプレーしていることもあり、負けたくないという思いがあります。身近なライバルとしてお互いに切磋琢磨し、NPCで一緒に試合に出ることができたらと思っています。試合に出るためにターボスのトレーニング以外にも、神戸スティーラーズのアシスタントS&Cコーチであるタカさん(佐々木 貴大)と連絡を取り、スピードトレーニングのメニューを教えてもらって取り組んでいます。それと、ステップももともと得意でしたが力を入れていますし、インプレー中のキックも。特にキックに関しては課題だと言われているので、継続して取り組んでいます。ウィングなので、試合中にキックを蹴る機会はそこまでないですが、あらゆる面で成長して、日本に帰ってきた時に変わったと思ってもらえるようにしたいです。

2024-25シーズンはアーリーエントリーとして3試合に出場することができました。シーズン後の個人ミーティングではフルバックとしてレンズからはより脅威になるようなプレーをしてほしいと言われています。ターボス派遣を通じて、スピード、切れを増したステップ、そして空中戦もより成長させて、神戸スティーラーズの『15番』を背負えるようになりたいと思います。

あと、これまではユーティリティさを持ち味にしていましたが、2024-25シーズンの経験から、それだけだったらいけないと感じました。リーグワンの試合に出て、周りの選手と遜色のないプレーはできたと思いましたが、僕でないといけないという存在感を発揮できたかと言われたらどうか。「僕らしさ」というのを磨く必要があると感じました。それが切れのあるステップと空中戦の強さです。今、ニュージーランドで良い経験をさせていただいているので、1試合でも多くNPCの試合に出て、レベルアップして帰ってきたいと思います!

星空が美しい、ターボスの本拠地があるパーマストンノース

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